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 ジェイダにとって、髪を剃る選択はその双方だったと思われる。まだ多少の髪が残っている状態ではスカーフで覆うしかない。しかし「隠す」のはもう止めよう、自分自身でいるために髪を剃り、あるがままの姿で生きていこうと決めたのだ。

他の人種に比べ、脱毛症が多い

 黒人は他の人種に比べて脱毛症が多いとされる。米国下院のアヤナ・プレスリー議員も2年前に脱毛症を公表し、今は全頭を剃っている。ファッショナブルなプレスリー議員はブレイズと呼ばれる黒人特有のヘアスタイルがトレードマークだった。そのプレスリー議員が髪を剃って有権者の前に立つには余程の勇気が必要だったと思われる。

 今回の平手打ち事件の直後、プレスリー議員は「ありがとう、ウィル・スミス」「日々、無知と侮辱の中で生きる脱毛症の妻を守る夫に感謝」とツイートしている。だが、ウィルに対する反暴力の声が高まったためか、このツイートは後に削除されている。

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 クリスはジェイダが脱毛症であることを知らなかったと報じられているが、これには大物女性ラッパーを含め、疑問の声があげている人も少なくない。一般の黒人女性たちからも黒人女性の髪を揶揄するのを止めろ、髪以外についてもクリスは黒人女性を貶めるネタをやめろ、の声が出ている。

©getty

白人と異なる縮れた毛質は見下されてきた

 黒人女性には髪にまつわる特有の歴史がある。北米での黒人奴隷制は約400年前に始まった。当時、白人は黒人を人間として扱わず、西洋文化に沿った生活様式を強要した。髪型を含む外観もそのひとつだった。

 白人と全く異なる縮れた毛質は見下され、黒人、特に女性たちは手入れによって直毛に近づける努力を現在に至るまで延々と続けて来ざるを得なかった。今では技術の向上によりあらゆる髪型が可能となっているが、アイデンティティの証として地毛(「ナチュラルヘア」と呼ばれる)を活かしたスタイルの女性も多い。

 しかし黒人特有の髪型は「エスニック過ぎる」「公の場にふさわしくない」という理由で職場解雇や生徒の停学/退学処分が行われてきた。