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 美咲が愚痴を続ける場面のBGMは中島みゆき「悪女」(81年/昭和56年)。「愛する人よ そばにいて」と歌う前者はなかなか五十嵐文四郎(本郷奏多)に会えないひなたの気持ち、月夜に本音をこぼして涙を流す女を歌う後者は、五十嵐に泣きながら本音を打ち明けるひなたの姿に重なる。少し古いヒット曲が流れるのも居酒屋らしい(第85回)。

 弟・桃太郎(青木柚)が高校に入学した92年、条映太秦映画村の休憩室で流れているのは米米クラブ「君がいるだけで」(92年/平成4年)。「月9」のトレンディドラマ『素顔のままで』の主題歌として大ヒットした。この後、上司の榊原誠(平埜生成)から映画村の動員数が激減していることを伝えられるが、恋愛ドラマの隆盛と時代劇の凋落が対比されている(第86回)。

「ムーンライト伝説」「愛は勝つ」「涙のキッス」…そして時代は平成へ

 ひなたがお化け屋敷の企画を出したときのBGMはアニメ『美少女戦士セーラームーン』の主題歌、DALI「ムーンライト伝説」(92年/平成4年)。「大月」ひなたが映画村に一筋の「光」を与える。

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 大部屋俳優としての長い下積みにくじけそうになっている五十嵐が去った後の休憩室で流れていたのは、KAN「愛は勝つ」(90年/平成2年)。「どんなに困難でくじけそうでも 信じることさ 必ず最後に愛は勝つ」と歌われるが、ひなたと五十嵐の時代劇(自分の進む道)への「愛」が試されている場面だった(第88回)。

©getty

「うちいり」で飲んでいる美咲と星川凛太朗(徳重聡)に五十嵐が酔って絡む場面のBGMはサザンオールスターズ「涙のキッス」(92年/平成4年)。ひなたと別れるのは「夏の運命(さだめ)」だったのかもしれない(第89回)。やがて五十嵐はひなたと別れて撮影所を去るが、後にハリウッドのアクション助手として撮影所に戻ってくる。彼の「愛」が勝ったのだろう。

 92年の冬、るいが「あかにし」でテレビを値切る場面で流れるのは山下達郎「クリスマス・イブ」(83年/昭和58年)。88年にJR東海のCMで起用されてリバイバルヒットした。「きっと君は来ない」の「君」は、桃太郎にとっての片思いの相手・藤井小夜子(新川優愛)なのかも。

 年が明けて、動員数が減り続ける映画村の休憩所で流れているのはZARD「負けないで」(93年/平成5年)。滅びゆく時代劇とそこで踏ん張ろうとするひなたへのエールのよう。この後、ひなたは虚無蔵の激励と平川唯一(さだまさし)のアドバイスをもとに英語の勉強を始める(第91回)。