8日、ついにフィナーレを迎えたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。親子3世代・100年にわたる愛の物語の結末に、視聴者は感動の渦に包まれた。「週刊文春」はこれまで何度もカムカムについて報じてきた。物語が完結した今、読み返したい記事を文春オンライン初公開する。文春でしか読めぬものがある――。(初出:週刊文春  2022年3月17日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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女優ではなくキャビンアテンド志望だった松原

「本当にお芝居がハマっていて、すごいなぁと」

 商店街の荒物屋「あかにし」の女将・赤螺清子役の松原智恵子(77)が、そう絶賛するのは?

「日活三人娘」の一人だった(写真 ドラマ公式HPより)

 松原は日活主催の「ミス16歳コンテスト」での入賞を機にスカウトされ、1961年に銀幕デビューを果たした。ひなたがオーディションに臨んだ場面(74話)には、若き日の自分の姿を投影したという。

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「オーディションには思い入れがあって。ひなたちゃん頑張って! と応援しながら見ていました。私自身はもともと役者を目指していたわけじゃないんです。地元の名古屋を出て東京の大学に行きたかったので、入選のご褒美だった東京見学を目当てに応募して。でも、後日『映画に出ませんか』というお電話を頂き、すぐに承諾をしました。好奇心が一杯でしたから。もし、ひなたちゃんと同じように落ちていたら、女優じゃなくて当時の夢だったキャビンアテンダントになっていたかもしれませんね」

 かつて、吉永小百合、和泉雅子とともに「日活三人娘」として人気を博した松原。今回の「ヒロイン三人娘」について聞くと、

「明るいひなたちゃんが和泉雅子さん。私は物静かなイメージがあったと思うので、るいちゃんかしら。でも、本当の私はおっちょこちょい。深津さんは私よりずっと落ち着いた方でした。可愛らしい安子ちゃんが吉永小百合さん……かな?」

 日活時代から約300本の映像作品に出演してきた松原が「本当にすごい」と口にしたのは、

「息子役(吉右衛門)の堀部圭亮さん。もともと役者じゃなくて、お笑いをやっておられたんですよね。戦争で亡くした家族を思って、お蕎麦屋さんで一緒に涙を流す場面は、とても自然に演じることができました」

 自身のセリフで印象に残っているのも、吉右衛門とのやり取りだ。

「初登場シーンですね(61話)。『そないきつい言うたらあきまへんえ』と息子の吉右衛門を叱りつけて入ってくるところです。京ことばは、事前にリモートで先生に教えて頂き、録音した音声を何度も聞いて、現場でも直前まで『これでいいですか?』と確認して臨みました」

 一方、大阪での撮影ではこんな楽しみもあった。