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「底意地の悪い福の神がいたら面白いよね?」に藤子不二雄の二人が出した回答は…天才・藤子不二雄Aの“らしさ”とは?

2022/04/09
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「ヤクザとかコワモテの大人を、一見気弱そうな少年がゆすってたら面白いな、と…」

 その“変”と“奇”、両方を名前に持つ主人公の漫画が『ブラック商会 変奇郎』(’76年)だ。『シャドウ商会 変奇郎』のタイトルで、1996年に元V6の森田剛主演でスペシャルドラマ化もされたので、ご記憶の方もいることと思う。

 筆者はこの作品で“請求書”の存在を知り、書き方を覚えるなど、社会勉強にもなる作品だった。新宿の高層ビル群の一角にある古風な骨董品店「変奇堂」の孫で、中学生の変奇郎が、持ち前の魔力と一部商品でもある秘密古道具(『ドラえもん』と対照的なのが面白い)を駆使して、理不尽な悪党をゆすり、時に退治するというブラック・ユーモア短編のジュニア版ともいうべき内容で、大ヒットした『魔太郎がくる!!』の流れを汲む作品として「週刊少年チャンピオン」に連載された。

 先生はこの作品について、「ヤクザとかコワモテの大人を、一見気弱そうな少年がゆすってたら面白いな、というのがおおもとの発想。それに僕の“変コレクション”を絡ませることで物語が膨らんでいったね」と振り返った。

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 変コレクションとは文字どおり、先生が世界中を旅行して収集した一風変わったコレクションのこと。作中にも登場した、大正時代の日本で作られたという“自動ハエとり器(『商の(10)恐怖のハエ男』に登場)”が傑作で、一見、工作機械か? 印刷機か? と思わせる大きな箱が、単にハエ数匹を捕まえるための道具だったりする。

「エサをまいたロールの上にハエを止まらせてね。夢中で食べてるところにゼンマイでロールが回って箱の中の虫かごに落とされる。またその回転がゆっくりで。こんなのんきというか悠長にハエを獲る機械を考えた人がいるっていうだけで楽しくなっちゃってね。我楽多市みたいなところで見つけて、一も二もなくその場で買っちゃったんですよ」

 と、嬉しそうに語るA先生も、このハエ取り器の発明者に負けず劣らず楽しい方だと思った。

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