コンビで「藤子不二雄」として活動し、『ハットリくん』や『怪物くん』に『プロゴルファー猿』(’75年)、さらに大人向けの劇画タッチで描かれた『笑ゥせぇるすまん』を筆頭に、いわゆる“ブラック・ユーモア”と呼ばれる読み切り短編作品群を次々に発表。生涯現役・ヒットメーカーを貫かれた。
1989年にTBS系の大型情報バラエティー『ギミア・ぶれいく』内のワンコーナーとしてアニメ放送された『笑ゥせぇるすまん』は、主人公・喪黒福造の声を演じた名優・大平透のハマりっぷりも手伝って大ヒット。「ホーッホッホッ」という福造笑いは老若男女みんながまね、流行語大賞こそ獲らなかったが、“ココロのスキマ、お埋めします”は名ゼリフとして長く記憶されることとなった。
「底意地の悪い福の神がいたら面白いよね?」に出した二人の“回答”
この稀代の名キャラクター創造についてA先生は、
「もともとは藤本君と、“底意地の悪い福の神がいたら面白いよね?”という話になって。彼は『21エモン』(’68年)という漫画に、福の神そっくりな、意地の悪い宇宙人として登場させたんだけど、僕は“不幸を売るセールスマン”として喪黒福造を考えた。何も売らないセールスマンがいたら面白いな、と思って」
と語った。宇宙人にする辺りがF先生、セールスマンにするのがA先生らしさと言おうか。その点を申し上げたところ、
「藤本君は僕なんか足元にも及ばない天才だし、SF作家としても才能があったから。平々凡々な僕は、現実的なセールスマンっていう発想になっちゃう。でも日常の“ちょい足し”というのかな? 現実とか日常なんだけど“ちょっと変”とか“奇妙”という部分に面白味を感じてね。そういう肉付け、味付けをしていくのが好きでしたね」
ご謙遜も甚だしいが、お二人の作家性の違いを言い得て妙のお言葉と感心した。そこでつい調子に乗って、
「なるほど、藤本先生はご自身のSF短編作品のSFを“すこし・ふしぎ”と説明されてらっしゃいましたけど、安孫子先生の作品は“へんな・ふぃくしょん”、“H・F”ですね」
と、告げたところ、「HFね。なんか言いづらいな(笑)」と半ば苦笑され、顔から火が出るほど恥ずかしくなったが、先生の温かさに助けられた思いだった。先生はいつご取材申し上げても、優しく穏やかにご対応くださった。
