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“明石家テニス同好会”を発足

「ミカン食うて太陽に向かって走っとけばええんや!」

 私だけではなく、東野さん、YOUさん、土田も、全員同時に「は?」とリハーサルもしていないのにハモった。

「あのな、野生のライオンはな、風邪ひいた時に、果物食って、太陽の陽を浴びて健康を取り戻すねん。せやから風邪引いた時はそうしたほうがええねん」

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「………………」

 あれだけのメンバーが揃っていたのに誰一人返事はおろか、うなずくことすらしない。まあ我々はライオンではないし、野生でもないから。その微妙な空気を察知してか、「まあ運動不足もあるんやろ? よっしゃテニス部でも作って体鍛えよか?」と、“明石家テニス同好会”を作ってくれることになった。

 その日の5人を発足メンバーに、毎週火曜日の夜に練習をすることに。次の週、読売ジャイアンツばりに30分前には皆集合し、準備体操をしたあとでいよいよ練習となった。さんまさん以外はほとんどテニス初心者のため、まずは基本のフォーム、打ち方を教わろうと、私が「どんな感じで振ればいいですか?」と、さんまさんに質問した。

誰かを目指さないと怒られる

「お前は誰を目指すのや?」

「はい?」

「どのプレーヤーを目指すかで、フォーム変わるやろ? 誰を目指すのや?」

「いや、あのー、まずは基本的なフォームを身に付けて、それから誰かを目指すといいますか。っていいますか、同好会でプロの誰かを目指す、とかありますかね?」

「あほんだら、誰かを目指さへんかったら、『こう打ちたい』とかのイメージも何もないやないかい。アガシを目指すんやったらアガシの基本のフォームがあるしやな、サンプラス目指すんやったらサンプラスの基本のフォームがあるやないかい。せやから誰目指すんやって言うてんねん」

「あー、じゃあ、アガシを目指します」とアガシの試合を見たこともなかったが、目指すことにした。というか目指すことになった。YOUさんも土田も、誰かを目指さないと怒られると思い、それぞれ誰かの名前を口にしていた。東野さんに至っては、ボケで絶対に目指していないであろう女性プレイヤーの名前を出していたが、さんまさんがそれに返すことはなく、東野さんのフォールト扱いになった。