中国のゲームは確かにつまらない
安田 藤田祥平さんはゲーム分野がメインのライターなので、当該記事で言及された「コンテンツ」はおそらくゲーム分野を指すかと思います。(記事を読みながら)えーと、例えばこんなことが書いてありますね。
>深セン市で体験したほとんどすべてのコンテンツのクオリティは、目を覆いたくなるほど低かった。(中略)ことコンテンツ創造にかんする、文化的蓄積がないのだ。
>だからこそこの国に、娯楽として洗練された日本のコンテンツをうまく輸出するべきだ。比喩的にいえば、悟空やマリオやピカチュウが向こうで泣き寝入りしないような形で、輸出するのだ。
>ここまでは、他の誰かがすでに言っていることの焼き増しである。ここに付け加えるとすれば――日本の優れた人材さえをも、うまく輸出することだ。
山谷 確かに中国のコンテンツのクオリティは低いのも目立ちますね。VRとか実に低い。
安田 でも、ゲーム分野で日本からの正規版コンテンツの輸出はとっくにされていますよね。2015年に中国に上陸したスマホゲーの『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』はめっちゃ流行りましたし、日本で売上げがすごい『Fate/Grand Order』(同じくスマホゲー)も、日本発のゲームとしては中国でのユーザー数が記録的に多い。最近、山谷さんがドハマりしている『魂斗羅 帰来』(同)もそうです。
山谷 だから「何を今更」ってツイッターに書いたんですよ。むしろ『魂斗羅』みたいに、日本のメーカーがコンシューマー機向けの新ソフトを作れなくなって、中国企業にライセンスを貸しちゃうみたいな例が最近は出ているわけで。
安田 ただ、中国のゲームってあまり面白くないですよね。中国人ってネトゲとかスマホゲーが大好きで、中国産ゲームもバンバン出ていますが、総じて日本のコンシューマー機向け基準での「良ゲー」に迫るものは少ない印象です。
山谷 中国ではコンシューマー機向けのゲームだとすぐに海賊版が出るので、ネトゲとスマホゲーしか採算が合わないんですよ。ただ、ご存知の通り、これらはリアルマネーの課金額と強さがおおむね比例する。地道なレベル上げや「やりこみ」みたいな楽しみは薄いですよね。
安田 中国はゲームだけじゃなくリアル社会からして、人間のレベル上げは重課金が前提。
山谷 ですよね。話をネトゲやスマホゲーに戻すと、これらはシステムデザイン上、どうしても内容が平板かつ単調になりがちなので、コンシューマー機向けゲームみたいなドキドキ感やストーリーへの感動みたいなものも薄くなります。ゲーム内の独特の世界観に没入して、サイドストーリーを想像するような余地も生まれづらいかも。
中国全プレイヤーの1000位以内に入った
安田 山谷さんは中国スマホゲー版の『魂斗羅』を相当やりこんでいますが。
山谷 中国全プレイヤーの1000位以内に入りましたよ。僕は小学生のときから『魂斗羅』の大ファンなんです。ただ、中国版は音楽やキャラなんかでオールドファンの心を相当につかむ作りにはなっているものの、やはりプレイ感は平板で単調なところがあります。それでもプレイしちゃいますが。
安田 藤田祥平さんの記事は「コンテンツがしょぼい」という指摘自体は事実を反映しているんですが、その処方箋として提示された「日本のコンテンツを輸出」は明らかに違う。
山谷 ですね。日本のコンテンツを輸出してカネに替えることはできている。でも、中国の業界的な限界やプレイスタイルの違いから、いくら輸出しても日本人の感覚で見て本当におもしろいコンテンツは生まれづらいんですよ。