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キョンはジビエとして売り出すことができない?

 千葉県で急増するキョンは、2001年に閉園した勝浦市の観光施設から逃げた個体が繁殖したのが始まりといわれている。

 2006年に約9100頭だった千葉県内のキョンは、2020年には約5万頭へと激増。この増加率から考えると、年間8500頭以上を駆除しないとキョンの数は減っていかないという。

捕獲に使われる「くくり罠」。猟師の苅込太郎さんは年間約500頭のキョンを捕獲している

 もっとも、キョンは外来生物法によって捕獲後は殺処分するのが基本とされているが、生き物を殺してゴミのように処分することに対しては「命を粗末にしている」と批判の声があるのも事実。

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 そこで注目されているのがキョンを食肉に加工して有効活用することだ。食品衛生法でも、特定外来生物を食べること自体は規制されていない。とくにキョンの肉は脂質が少ない良質なタンパク源なので、ダイエット食材に使うこともできる。

くくり罠にかかったキョン(猟師工房ランド提供)

 ところが、猟師工房ランドの原田祐介代表によると、キョンを新たな“房総ジビエ”として売り出すことはむずかしいのだという。

「私たちがキョンの肉を販売しているのは、生き物を殺めて命をいただいた以上、なるべく有効に活用したいという思いからです。いくらキョンがおいしいといっても、商業的に売り出して食文化にしてしまうと、キョンの肉に市場価値が生まれる。

 そうなったら、キョンを飼育したり山に放ったりする人が出てくるでしょう。ブラックバスと同じ問題が起きます。あくまでもキョンは殲滅するのが大前提なのです」(原田代表)

「キョンを殲滅することが大前提」と話す原田代表

 釣り好きにおなじみのバス釣りは、特定外来生物であるブラックバスを密放流することで発展した文化だ。バスに商業的価値が生まれたことにより、全国各地で密放流が横行した。

 キョンの肉に価値を与えてしまうと、ブラックバスと同じ問題が起きかねない。だから殲滅が大前提なのだという。

 とはいえ、いくら害獣といっても生き物を殺してゴミのように処分している現状があり、一方で食肉に加工すればキョンの肉がおいしいのも事実。なんとも悩ましい問題なのである。

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