「三振は打者をツーストライクに追い込まないと取れないので、初球から三振を狙うよりは追い込んでから考える投手が多いと思います。この前の佐々木君も、ツーストライクからはかなり三振を意識しているように見えました」(野田氏・以下同)
プロ3年目の佐々木投手は、岩手の大船渡高時代に160キロを記録。高校最後の夏には岩手大会の決勝戦、花巻東高との試合で登板を回避したことも話題になった。2019年のドラフト会議で4球団の競合の末に千葉ロッテに入団した。
「佐々木君に僕の記録は抜かれますよ」
3年目の佐々木投手について、野田氏は最近も自身の三振記録を抜くかもしれないという予感を感じていた。
「去年の秋頃から、佐々木君にまったくタイミングが合わずに三振するバッターが増えていたんです。完全試合の時も、芯で捉えた打球がほとんどなかったですよね。打ちに行ってもファール、見逃したフォークもストライクという手も足も出ない状態でした。それで今シーズン開幕後に仕事の関係者と雑談している時に、解説の『佐々木君に僕の記録は抜かれますよ』と話したんです」
佐々木投手が奪った19個の三振のうち、15個はフォークが決め球だった。その特徴について、野田氏は「高速チェンジアップに近い」と分析する。
「佐々木君のフォークは落ち方もすごいですが、一番は速度の落差でしょう。ストレートが164キロで、フォークが140キロ台後半、しかも腕の振りが強いので、バッターはストレートだと思ったらボールがまだ来ていない、という状態なのだと思います。球の変化には限界があって、どんなに落ちると言っても1メートル以上落ちるわけではない。でも速度の落差は、マウンドからホームまでの18.44メートルの中で、2メートルくらいはバッターの目測を誤らせることができる。つまり速いチェンジアップになっているんです」