1ページ目から読む
4/4ページ目

 6回を終わって6点差があった佐々木投手とは違い、野田氏の場合は8回まで1点差リードが続く接戦だった。

「3回を終わって8奪三振で、そのくらいから三振を数え始めたと思います。7回で当時の日本記録だった17奪三振に並び、8回1アウトで18個目の三振を獲ったところまでは覚えています。ただ9回裏に同点に追いつかれてしまい、19個目の三振はサヨナラ負けの瀬戸際のツーアウト満塁。三振よりも点を取られなかったことにほっとしましたね」

 当時の新記録を打ち立てた野田氏は9回で降板し、チームは延長10回にサヨナラ負け。野田氏には、今も心残りが1つあるという。

ADVERTISEMENT

完全試合を祝福される佐々木朗希投手 ©時事通信社

「実は19奪三振の記念球がないんですよ(笑)。今ならあとでベンチに届けられるんでしょうけど、当時は今ほど『記念球』を大事にする感覚がなかったのだと思います。それでも日本新記録を達成したということでその日の夜にニュース番組のオファーはあったんですけど、負け試合で三振記録を作っても格好がつかないなと思って断りました。完全試合をした佐々木君は本当にすごいです」

「2つの球種だけでも超一流。ここに…」

 不滅の記録と思われた野田氏の1試合19奪三振記録に、27年の時を超えて並んだ佐々木投手。野田氏は、佐々木投手の今後に期待を隠さない。

©時事通信社

「佐々木君は速球投手ですが、大谷投手と比べてもコントロールがいい。ストレートとフォークのキレは相当なもので、この2つの球種だけでもすでに超一流です。ここに時々投げているカーブが増えればさらに緩急がついて、メジャーでも十分に通用するスタイルに変わってくるでしょう。ただ次の登板は、注目度が上がりすぎて意識しまって投げにくいかもしれません。僕は19奪三振の次の試合の時は本当に調子が悪くて、降雨でノーゲームになって大喜びしたのを覚えていますから(笑)。まだ20歳、焦らずいけば史上最高のピッチャーになれる素質は持っていると思います」

 野田氏は佐々木投手の試合を解説する日がくるのを心待ちにしている。