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 すると憲兵の対応は“すっ飛んできた”というほど早かった。

 取調べ室では米兵が相変わらず、捜査官らに悪態をつき、ふんぞり返って椅子に座っていた。

もし逃げようとしたら、後から射殺する雰囲気

 ところが、憲兵が部屋に足を踏み入れた途端、兵士の態度が急変する。目を大きく見開き、瞬間的に立ち上がって直立不動。顔を強張らせた。元刑事Bは「一気に酔いが覚めたというのは、ああいうことを言うのだろう」。

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 それを見た憲兵は、即座に兵士を殴った。

「ガツンという大きな音がした。殴られた勢いで兵士がよろけると、またガツンと殴る。その繰り返しだ。暴れていた男が、子猫のようにおとなしくなった」(同前)

 兵士に対する憲兵の扱いはすさまじいものだ。護送する時は、自分の前を後ろ手にして手錠をかけた兵士に歩かせていった。「もし逃げようとしたら、後から射殺する」。そんな雰囲気だったと元刑事Bは語る。

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警察に逮捕や保護・厄介になる米兵は、思った以上にたくさん

 引き渡された米兵への処罰について聞くと、元刑事Aは「営倉にしばらく入れられた後、解放されるわけですから甘い」という。事件によっては引き渡し後に、軍法会議にかけられ、厳しい処罰が下るケースもある。しかし、ほとんどは裁判にかけられることなく、軍内部の懲戒処分で済まされてしまうようだ。

 殺人、強盗などの重要凶悪事件の場合、犯人の身柄が基地内にあれば、日本の警察が任意に捜査し、起訴を待って、米側から身柄の引き渡しを受けるという方法もあるというが、地位協定の壁に阻まれ簡単ではないだろうことは想像がつく。

「だいたいは船が基地を離れたり、本国に帰されたりしてそのままで終わりです」(元刑事A)

 事件を起こす者、酔って正体をなくす者、軍を脱走してくる者さえいるという。横田に厚木、岩国に三沢……、全国各地に基地はある。警察に逮捕や保護、厄介になる米兵は、思った以上に「一杯いるのです」(同前)。