日米地位協定は、在日米軍の軍人、軍属、その家族らが、日本の法律に縛られることなく、日本国内で活動できるための特別な権利を定めている協定である。彼らが日本国内で犯罪を行った場合、現行犯逮捕や緊急逮捕はできる。だが、犯人が在日米軍だとわかれば、米軍当局に通報して引き渡さなければならない。
そしてこの引渡しの時、戦争映画のワンシーンのような一幕が刑事らの目の前で、実際に起きるという。
憲兵が部屋に入ってきた瞬間、米兵が起立し直立不動に
「大暴れしていた米兵が、自分よりずっと小柄な憲兵の言うなりになり、手錠と足かせを掛けられ、大人しく護送されていきました」と元刑事Aは言う。泥酔状態の米兵を保護した時などは、憲兵が兵士をうつ伏せにして手錠と足かせを掛け、うつ伏せのまま護送していったというのだ。
引渡し時の米兵たちの変わり様を見て、元刑事Bも、米兵にとって憲兵はよほど怖い存在なのだと感じたという。
「憲兵が部屋に入ってきた瞬間、横柄な態度を取っていた米兵が起立し直立不動になった」
憲兵の対応が“すっ飛んできた”というほど早かった
今から十数年前のある夜、元刑事Bは強盗未遂で外国人男性を逮捕した。民家に押し入って住民を脅し、金を脅し取ろうとした男は、住民が大声を上げて抵抗したため、何も取らずに逃走した。通報を受けた元刑事らがすぐに現場に向い、近くの路上にいた犯人を取り押さえたのだ。
「逮捕した時はかなり酒が入っていたようで、両手両足を振り回し、ものすごい力で暴れた。捜査員たちが何を言っても暴言を吐き、横柄な態度を取り、まるで言うことを聞かなかった」(同前)
パトカーに乗せて連行する最中も、男は逃げようと暴れ、差別的な言葉を叫んでいたという。
「逮捕した時はわからなかったが、持っていた所持品から米軍所属の兵士だと判明した。米兵だとわかれば、日本の警察は手を出すことができないと、高をくくっていたんだろう」
元刑事Bはすぐに米軍側に連絡した。