Aさんの痕跡を消したのちは、前のような生活に戻るつもりだったとも語った星島は「自分の道具を人殺しに使いたくない」との理由から、916号室から持ち去っていた包丁を手に取り、血が飛び散るのを防ぐためタオルで覆いながら、無抵抗だったAさんの首をいきなり深く刺した。
ゴールは“元通りの生活に戻ること”
「早く死んでくださいと、早く死んでくれと、そのことだけを考えていました」
しかし、Aさんは5分ほど経過しても、生きていた。
「……早く死なないかと焦りを感じていました。包丁を刺しっぱなしなことに気がついて、引き抜けば、早く血が流れて早く死ぬと思いました。右手は口を押さえたまま、左手で首の包丁を引き抜きました。抜いた後、血の流れる量が増えた……。抜いてから呼吸が止まるまで5分くらいだったと思います。その間、早く死んでください、早く死んでくれと……それだけだったと思います」
こうしてAさんを殺害した星島は、凄まじい勢いで、その遺体の解体にとりかかる。彼のゴールは“元通りの生活に戻ること”だった。何日もかけ、ノコギリや包丁を用いて遺体をバラバラにし、トイレに流したり、ゴミとして投棄するなどした。その最中、警察が部屋の中を見に来ることがあったが、遺体の一部を隠している段ボール箱を指し「この中も見ますか?」など、逆に自分から見せるような態度を取ることで、発覚を逃れている。
一部の遺体は下水道管より発見
遺体をどう解体し、遺棄したかについては、被告人質問でも相当長い時間をかけて尋ねられた。特に陰惨な頭部の解体方法のみ、星島が法廷で語るのではなく、調書を読み上げる方法に切り替えるなど、一定の対応がなされていたようだが、衝撃的な内容であることに変わりはなかった。Aさんの関係者は時折、法廷を出たが、外から泣き叫ぶ声が聞こえてくる。のちに検察官は論告で「死体損壊、死体遺棄の態様は壮絶かつ悪辣」と述べていたがその通りだった。
被告人質問に先立つ証拠調べの段階で、Aさんの遺体の一部そのものの写真が、法廷の壁に備えつけられた大型モニターに映し出されてもいた。
「以上が、遺族の元に還ることができたAさんの全てでもありました」
こう検察官が述べたとき、モニターにはバットに並べられた肉片や骨片が映し出された。星島がバラバラにして遺棄したAさんの遺体は、逮捕後に警察が下水道管を捜索したことにより一部が発見されたからだ。