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「ゴリゴリの芸人観を捨てたのが10年前」プチ鹿島が“専門家じゃない人問題”に対抗するための時事ネタの扱い方

プチ鹿島さんインタビュー #2

2022/04/30
note

どこまでからかうか、風刺するか、批判するか

――時事ネタの難しさの一つに、どこまでからかうか、風刺するか、批判するか、その度合いの作り方があるのではと思うんですが、一番気をつけていることって何ですか?

鹿島 こう言うと当たり前ですが 「ユーモア」を大事にしていますね。子どものころ、父親が毎号買ってくる雑誌があって、それが「文藝春秋」と「中央公論」、そして「週刊朝日」だったんです。「週刊朝日」には巻末に山藤章二さんの風刺漫画「ブラック・アングル」が連載されていて、僕はまず、そこから読み始めてました。あの、ニヤッとさせる感じが好きだったんですよね。ネタにされた本人も思わず苦笑してしまうような、洒落た感じ。

――イラストやデザイン文字も相まって、絶妙な加減なんですよね。

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鹿島 そうです、ブラックユーモアというものを教わった気がしますね。それから、歯医者さんの待合室で何回も読んだ『よりぬきサザエさん』からも「本人も思わず苦笑」の影響を受けました。アニメのサザエさんからはあんまり想像がつかないんですが、もともとサザエさんって朝日新聞の4コマ漫画だったので、自然と時事ネタが入ってるんです。70年代に発表されたものだと、オイルショックがどうして波平がこんなこと言って、みたいな。ですから、僕がネタをするときには人を槍で刺すような笑いにならないように気をつけています。

――対象を刺すようなものは、笑っているほうもどこか高いところから笑っているような後味の悪さを伴いますからね。

鹿島 好みの問題だとは思います。ただ、正論――というか正論とその人が信じているものを強めに押し出す芸風は、自分の芸風とは違うなとは思っています。

鹿島さんの著書『芸人式新聞の読み方』、『教養としてのプロレス』、共著『プロレス社会学のススメ』

――ところで、先ほど話題にしたダースレイダーさんとのYouTube配信「#ヒルカラナンデス」は、新しい相方ができたような息のあったコンビネーションですよね。

鹿島 ラッパーという異分野ですが「気の利いた言葉が武器」という点が共通してるからこそ、ファンを獲得できたんじゃないかと思います。話のスピード感とテンポがとにかく心地いいと言われることも多い。ダースさんってなんでも知っているから、こっちも気兼ねなくアクセルを踏んで話を進めていける。あと、何より僕ら楽しそうでしょ? 政治ネタって楽しくて面白いし辛気くさいものではないんですよ。生活の延長なんだから。

 香川1区に行ったのも、ダースさんと「選挙特番を2人でやっちゃおうよ」という話から進んでいったもので。有料配信は2500人くらいが見てくれて、思いがけず一大興行になりました。

――注目の選挙区の野次馬に、みんななりたかったんですよね。

鹿島 野次馬感覚というのは結構大事だと思うんです。多少なりともそれに関心を持っているということですから。たとえば、次の選挙は投票に行ってみようかなとか、少し政治の動きに注意してみようかなとか、そういう気持ちの動きが誰かに起こっているなら、それはそれで意味のあることだと思いますし。