ヤクザに「4課が来たならしょうがない」と思わせないといけない
だからこそこうしたガサ入れでは「『4課だ!』と相手に伝えることが重要」と強調する。その要点は「『4課が来たならしょうがない』と相手に思わせるようにしなければならない。そうなるようにガサ入れ前には入念な準備が必要だ」という。
神奈川県警で捜査4課と暴力団対策課に所属し、長年にわたり捜査に携わっていた捜査幹部OBが解説する。
「ヤクザの事務所のガサに行くと、どこでもほぼ毎回、若い衆が『何しに来た! テメー、この野郎』と騒ぐ。これはお約束というか、ある意味でお決まりの騒ぎだ。『警察のみなさんはいどうぞ、お入りください』とやっていたら、兄貴分たちに怒られる。若い衆はここで格好つけて、突っ張ったところを見せなければならない。だからわざわざ余計に騒ぐ」
こうした押し問答について首都圏に拠点を構える指定暴力団の古参幹部が暴力団側の事情を解説する。
「事務所で留守番している若い衆は、警察がガサに来たからといって勝手に(玄関を)開けていたら兄貴分たちにどやしつけられる。だから、突っかかって警察を押し返そうとする。あとは責任者が来るまでの時間稼ぎという場合もある」
ガサに来た捜査員の多さに驚き
こうした不意打ちのケース以外にも、「実は警察のガサが来るという情報が事前に入っていることもある」と裏事情を明かす。
「その場合は『そろそろと思っていたが、来たな』となるが、それでも一応若い衆は騒ぐ。この場合はセレモニーだな」
この古参幹部の事務所にはこれまで警視庁だけでなく神奈川県警などの家宅捜索が何度も行われてきたという。その経験を踏まえると、「警視庁の4課は捜査員の人数が全く違う」のだという。
「最初に警視庁のガサが来た時は捜査員の人数があまりに多くて驚いた。ほかの警察本部の4課の場合は十数人だが、警視庁はその2~3倍の数で来る。当初は何かほかのデカい事件の隠しネタでもあるのかと思ったが、警視庁は組織がそれだけデカい。後には慣れっこになったものだったが……」