人間社会で生きていると、さまざまな人に出会う。その出会いが人を成長させる、という見方もあるが「どう考えても自分の人生にとって無意味。むしろ大損だった……」と感じてしまう出会いも存在する。
今回話を聞いたふたりの女性は、職場のアラフィフ男性から望まぬ好意を寄せられたり、セクハラを受けたりした壮絶体験を語ってくれた。(全2回の2回目/1回目を読む)
「ガッツがあるね。いいギャップだったよ」
フリーランスのウェブデザイナーとして働く上村美樹さん(仮名・30歳)は、一昨年の冬にとあるIT企業と業務委託契約を結び、働きはじめたという。そこで出会ったのが、デザイナーチームをまとめる猪瀬貴俊(仮名・46歳)だった。
長い間業界の第一線で働く彼は、仕事面では頼れる存在だったという。
「猪瀬さんは、スタッフをあだ名で呼ぶタイプの人で、私のあだ名は“うえちゃん”。カジュアルすぎるタメ口や距離の近さは気になりましたが、チームの雰囲気をよくしようとしているのだろう、と受け入れていました」
働きはじめた頃は、とくに問題もなく業務をこなしていた上村さん。しかし、3カ月ほどが経った頃、猪瀬氏はしきりに彼女をほめるようになったという。
「猪瀬さんは、私が弱音も吐かずに膨大な仕事量を終わらせたのを見たらしく『うえちゃんはガッツがあるよね』と言うようになったんです。
第一印象では仕事に没頭するタイプには見えなかったらしく『すごくいいギャップだったよ』なんて言い出して……。“ギャップ”って恋愛の場面で使う言葉というイメージがあったので、そのワードが上司から出たのが、とても気持ち悪かったのを覚えています」
突然の「ギャップ萌え」発言以降、彼は事あるごとに上村さんと接点を持ちたがるように。あるとき「勉強になるから」と提案され、ふたりで重要な案件に携わることになったという。
「たしかに案件の内容自体は未知の分野だったので、勉強になると思いました。でも実際には、プレゼンの資料作りだったり、スケジュール調整だったり、まるで秘書のような仕事をさせられたんです。終業後には毎日ふたりでミーティングをしていたのですが、ただの業務報告と世間話でした」
また、まん延防止等重点措置こと“まん防”の時期にも関わらず、週に2回はサシ飲みか、部署メンバーを交えた3人での飲み会に誘われた上村さん。誘いを断ると「今後のためにも参加したほうがいい」「うえちゃんのためを思って言ってるんだよ」と、諭してきたという。
「飲み会でも仕事中もずっと自分の自慢話ばかり聞かされました。若い頃はやせていてイケメンだったのが自慢だとかで、私にだけ若い頃の写真を見せてくるんです……。興味がなくても、けなせないので『かっこいいですね』とおだてるしかないですよね。そう言うと、満足した様子で自分のデスクに戻っていきました」