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学校はいじめ認定も「加害者や加害者の保護者に指導はできない」

 調査委が設置された後、Aくんは調査委員に手紙を書いた。

〈(不快なあだ名を)言ったお兄ちゃんたちがあやまってくれてなかよくできると思っていたのに、習い事で会ってあいさつしたのにいやなたいどをされた。なに?って言われた。また同じことを言われるかもしれないと考えると、すごくこわい。だから、すごくこわくて学校に行けない。学校に行きたいけど、こわくてお兄ちゃんたちがこわい。先生たちはいないって言って、ぼくが話をしてもぼくの話を聞いてくれないでいやだ〉

Aくんの成績表の通信欄には「いじめられたこと」が記載されている ©渋井哲也

 調査委の報告書では、〈「習い事の件」について実行行為が確認できなかった〉とした。〈会話や遊び等でひじょうに騒々しく、誰かに声をかけられたり、その姿を追うのも困難な状態にあることが明らかとなった。そのため、一方が相手に呼びかけをしたり、相手の目の前に突然現れたりしても、相手の声に気付きにくい〉という事情を理由にあげた。

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 母親はこの報告書について、「事実と異なる部分がある」として、異議を申し立てる所見を出した。「習い事の件」について、報告書では、先に指摘したほかに〈Aの母親のAへの見守り視線が、B、Cにとって非常に険しく、厳しい視線であったという印象を受けたことから、その視線に対して恐れや不安によって引き起こされた行動の結果〉とする部分がある。

「(厳しい視線の点は)いつのタイミングなのか明確になっていません。具体性に欠けます。それに、習い事での出来事を先生に伝えています。先生は2人に対して事実確認を行いましたが、厳しい視線で見られた、との報告を受けていません。むしろ、『驚いてしまったために、どういう態度をとってよいかわからなかったので、そのような態度になった。誤解させてしまったら謝りたい』と言っていたと報告を受けています。厳しい視線のことは後付けではないでしょうか。こちらに確認もありませんでした」(同前)

 報告書を読んだ母親は、学校側に、加害児童とその保護者がAくんに謝罪するようにと願い出た。「あだ名」の件のときと同じだ。

 加害者への対応は、どこの学校でも課題の一つだ。当初、校長は「(加害者と加害者の保護者には)指導できない。調査報告書には、どのように指導すべき、との提言はない」と言っていたという。その後、母親が粘り強く交渉すると、「指導はするが、謝罪するように強制はできない」と見解を変えた。母親が加害者側への指導を促すと、ようやく校長は加害者の保護者と面談をした。