原稿は送れない…絵を携帯で写真に撮って、急きょ出版
グレベニクさんはウクライナの有名な絵本作家。その童話は欧米で翻訳され、世界中にファンがいる。韓国で著書が出るのは今回が初めてだ。出版のきっかけはインスタグラムのストーリーに載せられた作家の絵だった。
版元「Storyseller(イヤギチャンス)」のイ・ヨンシル代表は、グレベニクさんのファンだった韓国人から教えられた。5万人ほどのフォロワーは安否を気づかっており、グレベニクさんはノートに描いていた日々の様子の絵を公開していた。
イ代表はその絵に心が揺さぶられた。
「これは絶対に本にしたいと思い、作家にメッセージを送ったのです。グレベニクさんは本にするつもりなどなかったようで驚かれていましたけど、すぐに快諾してくれました。ただ、問題は原稿をどうやって送ってもらうかでした」
移動していたり、住環境が落ち着かなかったために、絵や文字をデジタルファイルに落として送ってもらうことは難しかった。イ代表がグレベニクさんと最初に話をしたのは3月18日。そこから郵送などの手段で送ってもらうとなると、出版するまでにひと月もふた月もかかってしまう。イ代表が続ける。
「そんな話をしている間にも、戦禍はどんどん広がっていきます。私も作家も翻訳者も締め切りは設けず、ともかく一日でも早く出版したいという切実な思いでした。
結局、絵が描かれたノートを携帯で写真に撮っていただいて、送ってもらうことにしました。受け取った後は、韓国にいるデザイナーが写真の絵を鉛筆でそのままトレースし、翻訳者はロシア語の翻訳にとりかかりました。
そのような経緯で、4月4日に制作作業を終えて、14日に出版することができました。