「事件」が起きたのは昨年9月のことである。
札幌市に住む主婦RINさんは、市内から車で1時間ほどの郊外にあるキャンプ場で友人たち家族とグループキャンプを楽しんでいた。焚き火とBBQを堪能し、寝袋に入ったのは午後10時すぎ。3連休ということもあり、キャンプ場は「フェス会場並みに混んでいた」(RINさん)が、日中の疲れもあり、みんなすぐに寝入ってしまったという。
迎えた翌朝、5持に起床したRINさんたちはコーヒーを沸かして「目覚めの一杯」を愉しんだ後、朝食の準備にとりかかった。そこで初めて“異変”に気付く。
「あれ、クーラー(ボックス)がない!? 誰かテントにしまってくれた?」
誰もが首を横に振る。そのクーラーボックスは、キャンプ好きの間では高級ブランドとして知られる「イエティ」製で、1年ほど前に「念願かなって」ようやく手に入れたものであった。その大事なクーラーが、いくら探しても、どこにもない。どうやら深夜から早朝にかけて、何者かに持ち去られてしまったことが確定的となったのである。
「キャンプ場で盗難が増えているということは知っていたので、ランタンやチェアなどは寝る前にテント内にしまっておいたんです。『そうだ、クーラーもしまなわいと』と思ったのは覚えているんですが、結局そのまましまい忘れていたんです」(同前)
慌ててキャンプ場のセンターハウスに駆けこむもーー。
「スタッフの方は『そうでしたか。実は先週もランタンを盗まれた人がいて……』という感じで、具体的には警察に相談してください、と」(RINさん)
その日がチェックアウト日だった一行は家路についたものの、帰りの車中は「シーンとしてしまって……楽しかった気分も全て吹き飛びました」(同前)。
盗まれたクーラーがフリマサイトに「出品」された
早速警察に電話で相談するも、「被害届は出せるけど、捜査するとなると何か手がかりとか証拠がないとねえ」と冷たい対応だったという。証拠といっても街中と違ってキャンプ場には、防犯カメラもほとんどない。このまま泣き寝入りするしかないのかと半ば諦めつつも、RINさんの夫はこう呟いた。
「もしオレが犯人だったら、転売すると思う。それもできるだけすぐに」