知床観光船事件は最悪の結果を迎えそうで、3歳のお子さんが犠牲になったり、プロポーズして新たな門出を目前にした若者たちの死も報じられたりと、実に痛ましい事故になってしまいました。沈みゆく船から奥さんに携帯電話でお別れの言葉を伝えた逸話も伝わり、せつなくて胸が締め付けられる思いがします。
実のところ、私もかねて数度利用したことのある観光船だったので、えっ、あれが沈んだのかという驚きと、もうちょっとどうにかならなかったのかという怒りとが悲しみに混ざって何とも言えない気分になります。
神の御許に召された方々の魂に限りない平安があらんことを心よりお祈りいたします。
ベテラン社員の解雇を中心とした固定費削減で収益を確保
事故後の報道で、観光船運営会社のずさんな経営が明らかになって、以前に軽井沢スキーバス転落事故で15名が亡くなった事件とも相似だなあとも感じるわけなんですが、ここでも行き過ぎた経営の合理化が安全管理を怠り、結果として偶発的なヒヤリハットがそのまま最悪の事態になってしまうケースのように見えます。
以前にも座礁事故を起こして処分と再発防止の計画書を出していたとか、予兆となる事案から対策が打たれずそのままになっていたのだとすれば、観光船運営会社の責任が追及されるのも当然のことと言えます。ようやく社長さんが出てきて土下座までされたそうですが、亡くなられた船長さんに責任を押し付けるかのような説明もあったようで、死人に口なしとまでは申しませんが、ほかに言いようがなかったのかという気持ちにもなります。
また、この観光船運営会社はもともと赤字で、著名な経営コンサルタント会社が関与することで経営が立て直されたと豪語し、自画自賛するような記事が経済系ニュースサイトに掲載されていたことも明らかになっています。経営改善の過程でどのような助言が行われたのかは定かではありませんが、そこでの記述を見る限りでは、経営再建のためにベテラン社員の解雇を中心とした固定費削減で収益を確保するタイプのリストラが行われていたことは間違いなさそうです。
実のところ、不振会社を買収して経営者を入れ替え、収益化させて第三者に売却するという、俗にいう「ターンアラウンド(企業再建)案件」というものは以前からずっとあります。不動産でも築古の物件をリノベしてきれいにして高い値段で貸したり売ったりする手法がありますが、企業・法人においても、経営不振に陥っているけど売り上げはしっかりある老舗というものはたくさんあり、それらは往々にして前経営陣が人情や業務上の問題で古株の社員を解雇できなくて人件費の重みゆえに不採算だという事例が多くあります。