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「休んだ1日1日、老いていく自分を感じざるを得ない」森山良子74歳の葛藤と“音域を半音上げる壁”に向き合う理由

森山良子さんインタビュー #3

2022/05/08
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由紀さおりさんと話した「若い頃と、今の年代の3年の違い」

――4月末からはコンサートツアー「My Story」も始まっています。挑戦し続ける姿勢と共にワーカホリックといいますか、74歳になっても全然立ち止まらないですね。

森山 由紀さおりさんと話していたんですけれども、若い頃の3年と私たちの年代の3年は違うわよね……と。

 若い頃は休んでもなにも思わなかったけど、70代にもなると、休んだ1日1日、老いていく自分を感じざるを得ないんです。精神的にも肉体的にも声楽的にも前を向いていたい。となると、こういう動き方になってしまうんですねえ(笑)。

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「歌だけは、これっきゃない!という気持ちです」

――こと歌われることに関しては、ご自身に厳しいものをずっと課しています。

森山 他にできることがないんです。頭がよくて弁が立つわけでもなく、見た目がいいわけでもない。自分が一生懸命になれること、上手にできることが他にまったくないので。

 でも歌だけは、もっともっと練習したら皆さんに喜んでもらえるかもしれない。これっきゃない! という気持ちです。

 そういえば昔、娘が幼稚園生だった頃に「どうしてママは他のママみたいにお家にいないの?」と聞かれたことがあります。

――コンサートでお家をあけていらっしゃるから。
    
森山 「歌うのが大好きだからいろんなところで歌ってるの」と答えたら、「それならお家でずっと歌っていればいいじゃない」と返されて。彼女の言う通りで、ぐぅの音も出なかったですね(笑)。いろんな考え方があると思いますが、私は理想をずっと追い求め続けたいし、お客様にもそういう自分の歌を聴いていただきたいと思っています。「歳だから劣ってきたな」と思ったら、それが私の引退するときなんでしょうね。

 

写真=鈴木七絵/文藝春秋

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