文春オンライン

「ドイツから元カノが乗り込んできて修羅場になっちゃう(笑)」文豪漫画の作者たちが「一緒に住みたい文豪・住みたくない文豪」を妄想してみた

『めぞん文豪』制作陣インタビュー

note

志賀直哉には自分の性癖を詰め込んだ

――原作者がふたり、漫画担当がひとりの3人体制でどのように制作しているのでしょうか?

菊池 2週間に一度くらいのペースで、僕と神田さんで打ち合わせをしています。僕の質問に対して神田さんが答えたのを僕がプロットにまとめて、神田さんがギャグを足して、それをもとに河尻さんがネームを切ってストーリーに仕上げるような流れです。

――菊池さんの質問に神田さんが答える、とは?

ADVERTISEMENT

菊池 たとえば、僕が「夏ですけど、夏ってなんですかね?」と聞きます。

神田 夏といえば海だよね。

菊池 海でどんなことをするんですか? そのとき川端康成はどうしているんですか?

神田 海の家に行って、川端はひとり家にいるんだよ……みたいな感じですね。

――文豪をテーマにする上で、守っている一線というのはありますか?

感受性の強い主人公・太宰治。『めぞん文豪』ではその立ちふるまいも現代風にアップデートされている©神田桂一、菊池良、河尻みつる(少年画報社)

菊池 さすがに本人が書いているのと正反対のことはやらないようにしています。「トマトが嫌いな人の好物をトマトにしない」程度のルールではありますが。

神田 僕はあまり気にせずアイデアを出すので、菊池くんによく修正されています。ガキ使のパロディをやろうとして、「それはさすがに文豪と関係なさすぎる」と言われたり(笑)。僕のフリーなアイデアを史実に繋げるのが菊池くん、という役割分担でいます。

――河尻さんは、キャラデザなどで守っている一線はありますか?

河尻 モデルとなる文豪の顔写真はあえて見ません。原作のおふたりにキャラクターの特徴やプロフィールについて聞かせてもらい、そこに私自身のその文豪に対するイメージを混ぜ合わせるような形でデザインしています。

 あくまで『めぞん文豪』という作品の世界なので、実在する写真をそのままアウトプットするようなことはしなくていいのかなという考えです。なので志賀直哉には、褐色、短髪、舌ピアスと自分の性癖を詰め込みました(笑)。

坂口安吾とのシェアハウスは揉め事必須?

――『めぞん文豪』に登場する中で、一緒にシェアハウスで住みたい文豪、住みたくない文豪は誰ですか?

神田 住みたいのは武者小路実篤ですね。

――作中の実篤は、シェアハウスの住民たちに手料理を振る舞ってくれる一方で、オーガニック好みでSDGsへの関心も高いですよね。ライフスタイルへのこだわりの強さという意味で一緒に暮らすのは少し大変そうな気もしますが……。

『めぞん文豪』に登場する武者小路実篤©神田桂一、菊池良、河尻みつる(少年画報社)

神田 僕もていねいな暮らしを日ごろ実践していますから……というのはウソですけど(笑)。実篤は「新しき村」という農村共同体を設立し、開村から100年経った今でもその村は続いています。僕はコミューンに関心があるので、いろいろ興味深い話を聞かせてくれそうです。

――神田さんは実際にシェアハウスに住んでいたことがあると聞きました。その経験をもとに、一緒に住みたくないのは?

神田 坂口安吾ですね。神経質な人がひとりいるとマジで揉めるんですよ! シェアハウス時代、僕が朝ごはんを7時くらいに作っていたら、そいつが無言でじっと立っているので、「うるさいってことですか?」と聞いたら、「はい」って……。朝7時なら朝食作ったっていいだろ! そいつのせいで僕の前に5人くらい出ていきました。