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――近年は罪を犯した人について「メディアに出すな」という意見も大きくなっていますが、三宅さんはどう思われますか?

三宅 私たちも、「被害者の気持ちを考えろ」「加害者の支援をするならまずは被害者の支援をしろ」という風に言われることはよくあります。もちろん罪を犯したら、刑を受けて反省する必要があります。ただ、刑期を満了して出所した受刑者の採用を支援することが被害者を傷つけるとは思っていません。むしろ加害者が出所後に何の支援も受けず、再犯のリスクが高いまま社会に出ることの方が、被害者にとっては怖いことではないかと思います。間違いを犯した人にも居場所があり、仕事をしてやり直すことが再犯防止になり、これ以上の被害者を出さずに済むことに繋がると思っています。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

「私が堕ちるところまで堕ちなかったのは…」

――三宅さん自身の出所者支援のモチベーションはそのあたりにあるのですね。

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三宅 受刑者や出所者と会って犯罪に走るのには理由や背景があると知ったことで、私は自分がいかに恵まれていたかを強く実感しました。非行に走った私が堕ちるところまで堕ちなかったのは、自分を愛してくれる両親がいたからです。両親は私を見捨てず、学び直すための環境さえ与えてくれました。でももし私が親から虐待を受けていたり、今日食べることも難しい環境だったりしたら、犯罪に手を出さずに生きてこられた自信は全くありません。今、罪を犯した人をネットで叩いている人だって、病気などで職を失ったり災害に遭って住む場所が無くなったりしたとしても、絶対に犯罪をしないと言い切れるでしょうか。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――データを見ても、犯罪率と貧困や虐待の相関関係はかなり高いです。

三宅 私が会った人たちの中でも、貧困や虐待に苦しんでいた人は多くいました。多くの加害者は、かつて何らかの被害者だった場合が非常に多いんです。メディアには、何か事件があったら面白おかしく書き立てるのではなく、その背景や社会課題までしっかり伝えてほしいですね。

 最近私は『Chance!!』のほかに、前橋刑務所で物事の捉え方を見直すための講座を始めました。いくら良い会社に入社できたとしても、物事の見方や捉え方が逮捕前と変わらず、同じ結果になってしまうのも何度も見てきました。講座だけで人の心を変えられるとは思ってないけれど、出所後にその授業が少しでも役に立てばいいなと。そういう思いでこれからも活動を続けていきます。

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