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「出所したら氷結を飲んでみたい」仮釈放後に就職する会社が決まっていた無期刑の受刑者が、出所後に望んだ2つのこと

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note

――出所する前に亡くなってしまった。

三宅 はい。夜遅くに連絡を頂きました。面会した時に、万が一の時に葬儀や納骨をどうするかという話をしていて、「自分が刑務作業でもらった報奨金の中でやってくれ」ということだったので、希望どおりにしました。私は納棺師でもあるので、納棺もさせて頂きました。氷結を“末期の水”として口元に含ませて、内定先の社長が作ってきてくれたきんぴらを“末期のきんぴら”として口元へ持っていって。すごくあたたかいお見送りができました。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――出所したらやりたいと話されていた憧れの生活を再現されたのですね。

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三宅 Мさんが生きて刑務所を出られたとして、社会に馴染めたかは正直わかりません。人との付き合い方からゴミの出し方まで、社会生活に必要なことをゼロから学ぶのは難しいし、そういうことを教えてくれる環境があったとしても、本人が頑張れるかどうかもわからない。しかも高齢であればなおのこと、本人が真剣に真面目に頑張ろうと思っていても、これまで培ってきた生き方の癖はなかなか直りません。でもやっぱり、彼が働いて笑っている姿を見てみたかったですね。

2021年冬にはピエール瀧も登場

――「Chance!!」では毎号、出所して働いている人が表紙を飾っています。表紙の人のインタビューも掲載されていますよね。

三宅 表紙は出所後に就職した会社で半年以上働き続けている人の中で、重篤な被害者がいる犯罪ではない理由で収監されていた人にお願いしています。罪を犯しても今は更生して立派に働いている人がいることを伝えるのは、社会に対しても受刑者に対しても刑務所に対しても、意味のあることだと思っています。

©文藝春秋 撮影/宮崎慎之輔

――2021年冬号では、コカイン使用で逮捕されたピエール瀧さんも登場されています。ピエール瀧さんがメディアの取材に応えたのは逮捕後初めてでした。

三宅 私たちは普通に事務所にご連絡をして引き受けていただいたのですが、受刑者向けの求人誌に出ることに意義を感じて頂けてのことだとしたら嬉しいですね。