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 少し厳しいことを書きましたが、家を出てから音信不通の親、子供は日本だけで何千人といます。それでも皆が生きていてくれればそれでイイんじゃないでしょうか。

 さて最後に、一目顔を見たいというあなたとご両親の気持ちはお姉さんに伝えるべきでしょう。但しお姉さんのこれまでのことやこの先の話はすべきではないでしょう。何度も言うようですが、一人一人が独立した人格であることを認めなくてはいけません。

 これはいらぬことですが、全国で親御(おやご)さんと音信不通にしている皆さん、親は一日たりともあなたのことを考えない日はありません。元気でいることをあなたなりのやり方で伝えるべきだと、私は思います。あなたのためではなく親御さんのためですから。

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©文藝春秋

45年連れ添った夫の死にどう向き合えばいいのか

 ガン告知から8カ月で主人が亡くなり、そろそろ2年が経ちます。主人は人間的に素晴らしい人で、45年の結婚生活にとても感謝しています。彼を失った後、私には夢も希望もなく、生活の喜びがまったくなくなってしまいました。命には限りがあり、いつか別れが来ることを頭では理解しているのですが、毎日、心にさざ波が立っています。この状態を脱して、前向きに生きていくにはどのように心を処せばいいでしょうか。(73歳・女・無職)

 それはご愁傷さまでした。

 今はさぞおつらいでしょうな。

 三回忌を迎えた頃が、実はもっとも切ない時期のように、私が見る限り、思えます。

 しかも45年、互いが助け合ってこられたのですから、ご主人の存在は奥さんの人生のすべてと言えるでしょう。アッと言う間の2年でしたでしょう。

 ありきたりですが、私はそういう立場の人にはこう話します。

「時間がやがて解決をしてくれるでしょう。時間は苦悩の最大のクスリです。今はそう思えずとも、やがてわかる時が来ます」

 さらに言わせてもらえれば、

「近しい人の死は、残された人のしあわせのためにある」と思います。

 だってそうでしょう。それほどいとしさをくれた人が、いとしい人が慟哭し、打ちひしがれている日々を知ったら、先に行った人の死が可哀相じゃありませんか。

 同時に知っておいて欲しいのは、奥さんと同じ立場で、同じ哀しみを抱いて生きている人が、実は多勢いることです。

 必ず笑える日が来ますから。

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大人への手順

伊集院 静

文藝春秋

2022年4月22日 発売