「非核化に転換するなら、北朝鮮の経済と生活を画期的に改善する大胆な計画を準備する」

 5月10日に行われた韓国新大統領就任式。4万人を前に演説した尹錫悦氏は、日本やアメリカとの関係には言及せずに、具体的な国名は北朝鮮だけをあげ、重視する姿勢を見せた。

 冷え切った日韓関係に言及しなかったのは、北朝鮮を刺激しないためか、日韓外交への自信ゆえか……。

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 実はこの就任式には日本から青森地検の“ヒラ検事”が国賓級の待遇で招待され、出席していた。隣国国家元首による異例の招待に、霞が関界隈では嫉妬などが渦巻いたという。

尹錫悦大統領 ©getty

“国賓級”で招待された“ヒラ検事”とは

「招待されたのは青森地検ナンバー3の小池忠太検事です。小池検事は韓国駐在経験があり、その時の縁です。尹氏は当時、韓国の検事総長でした。日本の中堅どころの一検事が、大統領就任式に呼ばれるのは異例です。しかも、日韓議連会長で重鎮政治家の額賀福志郎元財務相と“同格”で招待されています。

 一検事として彼が隣国の大統領にそれほどまで気に入られていることは素晴らしいですが、日本の外務省や官邸はよく思わないでしょう。『韓国大統領は辞めたら逮捕される』なんて揶揄される韓国では『検察』ネタは火種だらけ。いまは新大統領就任で特に注目を集めている。ノコノコ行ったら何に巻き込まれるか分かりません」(法務省関係者)

 しかしながら、日本の法務省は小池検事をソウルへ派遣することを決定した。

「基本的におめでたい話ですからね。大統領と一検事で立場は違えど、過去に芽生えた友情を大事にさせたのでしょう。また、日本の検察としても、韓国は犯罪人引渡条約を締結しているたった2カ国のうちの1カ国。招かれたらむげにもできません。むしろ日韓関係が困難な状況にある中、立場のある幹部では無く個人的な関係のあるヒラ検事だからこそ、法務省は送り出したとも考えられます」(法務検察担当記者)

 新大統領就任式は日本ではなじみのない文化だ。文在寅氏は開催しなかったが、それまでの韓国歴代大統領の就任式は、権力を見せつけるため、専門の準備委員会が設置され世界各国から要人を招待してきた。今回は数百人規模の招待客が出席しているが、もちろんビッグネーム揃いだ。

過去に朴槿恵氏の大統領就任式でパフォーマンスをみせたPSY ©getty

「日本からは岸田文雄首相の特使として林芳正外相のほか、額賀会長ら日韓議連の幹部、鳩山由紀夫元首相も参加しました。中国は王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席、アメリカはハリス副大統領の夫を団長とする代表団。シンガポールのように大統領自ら参加した国もありましたね。

 著名芸能人が花を添え、朴槿恵氏のときは『江南スタイル』を世界的に大ヒットさせたPSYが登場しました。今の韓国には韓国エンタメ史上最高レベルの知名度を誇るBTSがいますが、政治利用するなというファンの声が強く、呼べなかったようです。

 今回の就任式は国会前広場で一般の参加者も見込み、4万席規模で行われました。確かに、韓国の駐在経験があり新大統領と知人だとはいえ、日本の一検事が参加するのは少し変だなという気もしますね」(大手紙国際部記者)