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《“アマチュア政治家”が異例の就任》「韓日関係困難でも正義を実現する友情は変わらない」韓国新大統領が日本の“ヒラ検事”を就任式に招待したワケ

《“アマチュア政治家”が異例の就任》「韓日関係困難でも正義を実現する友情は変わらない」韓国新大統領が日本の“ヒラ検事”を就任式に招待したワケ

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 両国でのハレーションが予測される場面であっても、日本の一検事との友情を尊重する韓国大統領――。文在寅大統領が慰安婦や徴用工問題で対日姿勢を強め、日韓関係が「戦後最悪」とも言われる中で就任したわけだが、尹錫悦大統領はどんな人物なのだろうか。

「今の韓国で検察ネタは火種のもと」

 前出の法務省関係者がそう話すように、政権交代直前の韓国の報道は検察庁法改正で持ちきりだった。

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 文在寅大統領は5月3日、検察の捜査権を大幅に縮小する改正法を公布。検察が捜査を担当した「6大犯罪」のうち、公職者(公務員や政治家など)、選挙、防衛事業、大型惨事(重大事故)の4分野の捜査権を強引に警察に移した。残る汚職や経済犯罪の捜査権も、文在寅大統領政権下で与党だった「共に民主党」は剥奪する方向性でまとまっていると報じられている。

日本の検事と昵懇の“検察側の大統領”

「文在寅大統領が“イタチの最後っ屁”として、検察の弱体化をあからさまに目指しているわけです。近年の歴代大統領は辞任すると、逮捕されるのが通例のようになっています。

 前任の朴槿恵元大統領は、任期中にサムスンやロッテといった財閥グループから現金を受け取っていたとして、大統領を罷免され逮捕されました。その前の李明博氏も巨額の収賄などで逮捕され、有罪が確定。さらにその前の文在寅大統領の師匠にあたる盧武鉉大統領は、辞任後に親族に対する収賄関係の捜査が本人にも及んだところで投身自殺。文在寅氏もやましいことがあるのか、検察の弱体化に必死でした」(前出の国際部記者)

 さらに、尹錫悦新大統領は文在寅氏によって検事総長に抜擢をされながらも、曺国元法相のスキャンダルを捜査。その後、文在寅氏によって実質的に追放された、「検察側」の人物だ。

©getty

「尹氏は検察トップを務めたとはいえ、政治経験のなかった“アマチュア”。しかし文在寅氏に批判的な世論に一気に担がれ、野党候補である尹氏が政権交代を成し遂げたのが今の韓国情勢です。

 尹新大統領は時の政権に反対する学生運動をして逮捕経験もあります。学生時代に、民主化運動を弾圧して死者をだした光州事件について模擬裁判を行ったのですが、当時の大統領だった全斗煥氏に死刑を求刑した。気骨がある人物ですよ」(同前)

 元検察官といっても決して“ピカピカのエリート”というわけではない。長く司法浪人をしていた苦労人でもあるのだ。

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