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神出鬼没! 謎のおじさん・笹川刑事部長

 事件の解決に時間がかかったり、誤認逮捕で一課長自身が不手際の責任をとって進退伺を出したりと、過去作では紆余曲折あった。そんな一課長の直属の上司である笹川刑事部長は、差し入れの大福を持って陣中見舞にくることもあれば、「今回もベリーグッドです!」と一課長を褒めて育てる人格者だったはず。

『警視庁・捜査一課長』公式サイトより

 ところが、途中からなぜかダンスやジェスチャーで事件解決のヒントを与える「謎のおじさん」と化した。尿意を我慢しながら踊っていたり、自ら手錠をかけてひとりがんじがらめプレイをしていたり。神出鬼没の登場シーンが増え、視聴者もちょっと身構えるようになった。竹刀をもって襲い掛かってきたり、岸に向かってくる船上で手旗信号をしていたり、ロープで吊り下げられて登場したり、ローラースケートで滑っていたり、とやりたい放題の博太郎。最近はロッカーの中から登場し、再びロッカーへと戻っていくのがお気に入りだ。

 そして今期season6の第1話では、防犯カメラ映像に映りこんでいた。なぜか赤いフリンジのついた銀色の全身タイツに、真っ赤なボクサーパンツとエナメルシューズを履いている。

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『警視庁・捜査一課長』公式サイトより

 タイムリープを絡めた事件とはいえ、こんな刑事部長は前代未聞というか、イヤだ。ところが、初回放送中にTwitterで日本トレンド1位、世界トレンド3位をマーク。テレ朝の戦略はそれなりに成功したといってもいい。

猫好きを取り込もうとする魂胆が成功

 また、一課長は猫を飼っている設定だ。ビビという名のオス猫で、基本的に愛想がない。エサにもおもちゃにもこだわりがあって時々凶暴という、ドラマに出てくる猫にしては自然体の設定で、猫好きの人をとりこんできた。

 内藤剛志の事務所社長の愛猫が歴代つとめてきたが、今回久しぶりに代替わり。ビビは隣家へ行っている設定で、あずきという猫が登場した。ちょっと引っ込み思案な子のようだ。

 というか、今シーズンの宣伝用のポスターを見てほしい。主演の内藤剛志よりも猫のほうをはるかに大きく配置。刑事ドラマとは思えないデザイン、潔いほどの本末転倒である。この思いきりのよさ・プライドのなさは、逆に称賛に値する。

『警視庁・捜査一課長』公式サイトより

 コロナ禍真っ只中の2020年には、2クールぶち抜きを敢行したものの、撮影がままならず途中で再放送という憂き目にも遭った。それでも内藤・金田・塙と猫によるオンラインイベントなどを積極的に行い、「硬派な刑事ドラマ」よりも「猫好きを喜ばせ、親近感のある定番コントドラマ」へと舵を切ったことがわかる。

 新奇性へのチャレンジは他にもある。