文春オンライン

2022/05/12

放送開始数秒でツッコめる稀有なドラマ

 ドラマの冒頭シーンというのは、視聴者を惹きつけてチャンネルを変えさせないためにも相当の努力と工夫が必要である。「一課長」は基本、冒頭シーンが同じだ。電話が鳴り、一課長がとる。そして殺人現場の概要を一言で表現する。それがもう突拍子もなくて、現実味の薄い文言に徹底しているのだ。例をあげよう。

「ナニ? ご遺体が空から降ってきた?!」

「ナニ? ベビーカステラを握ったご遺体?!」

「ナニ? 恵比寿のアメリカ橋にいい香りのご遺体?!」

「ナニ? 自分で墓穴を掘ったご遺体?!」

「ナニ? 近づくとくしゃみが出るご遺体?!」

「ナニ? 殺人現場からシンデレラが逃げた?!」

「ナニ? 100人の恋人がいるご遺体?!」

「ナニ? 揚げたてのコロッケを握ったご遺体が?!」

 現実的に一課長がこんな報告の電話を受けるはずもなく、ツッコミどころ満載だが、逆に警視庁捜査一課の本職の人が笑い飛ばして許してくれそうな冒頭なのだ。

 基本的には“握り系”のご遺体が多いのだが、今期はやや変化球だった。「20年前に死んだはずの女性が現れた?!」という一課長、ブランクの小芝居による「夢」ボケで幕を開けた。夢から覚めた後も、一課長は真顔で「タイムトラベラーのご遺体が見つかった」と言う。もう、いろいろな意味で現実離れが加速。最終的には映画「007」シリーズのように宇宙へ行って大失敗、みたいな話になるのか? どこへ行くのか一課長。それでも気になる一課長。

 他にも金田明夫の異様に派手な色のネクタイとか、東京全域をしらみつぶしというムチャブリ捜査方針とか、「なるはや」も「けつかっちん」もわからない令和の新人鑑識・古代学(飯島寛騎)のとぼけっぷりなど見ようによっては楽しめる。自分なりのツッコミどころを見つけて愛でる、視聴者カスタマイズ系ドラマなのだ。

 そういえば、昨年から今年にかけて、局員の不祥事(窃盗や詐欺、経費の私的利用など)が続いたテレ朝。「ナニ? テレビ局の局員が詐欺を働いた?!」と一課長に言わせる日が来たら、それはそれで斬新な自浄作用だなと密かに期待している。

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