「日本人は自分が悪いくせに、嘘をついている」
彼女はそう証言したのだ。
電車に乗る前からすでにベロンベロンで…
「どこの組織でも、同じ組織の人間を捜査するのは嫌なものだ。しかし、これはきちんと処理しないと、後々尾を引くことになる」。そう判断した署では、一個班を入れて当日の警部補の行動を捜査した。
あちこちに設置されている監視カメラや防犯カメラが調べられた。
「結果、警部補が新橋で電車に乗る前からすでにベロンベロンの酩酊状態であり、東京駅ではまともに歩けないくらい泥酔した姿が捉えられていた。御茶ノ水駅ホームのカメラには、中国人を引きずり下ろす警部補の姿が映っていた」(A氏)
中国人のほうが年齢的にも体力的に有利だったこと、警部補がひどく酩酊していたことから、押された拍子に線路に転落したことが判明した。
「民族に優劣をつけたり、アジア系に厳しくあたることはない」と言うが…
「警部補の言動を見ると、彼には中国人への偏見があったのだろうと思わざるをえない。この事件は殺人未遂ではなく、傷害で処理することになった。仲間だからというより、人間性が問題になった事件だった」
傷害事件で起訴された中国人には、最終的に懲役3年の有罪判決が言い渡された。この中国人は服役し、「いきさつはともかく、自分が悪いことをした。お酒を飲んでいたし、絡まれたとはいえ、自分がやったことは許されることではない」と用意できるだけの金額で被害弁済したいと申し出た。だが、警部補の妻はこれを受け取らなかったという。
「外国人の事件を捜査する者は、悪いことをした人を取り締まるが、外国人だからといって取り締まるわけではない。特に外国人犯罪の捜査員には外国人の友人知人が多い。だから、民族に優劣をつけたり、アジア系に厳しくあたるということはない。人間性が欠けているような結果には絶対にしない」と言うA氏は、すべての警察官が彼と同じ考えや意識ではないことを一番よくわかっている。