「レイシャル・プロファイリング」という言葉がある。日本語では“人種に基づく捜査対象の選別”。人種や肌の色、民族、国籍、宗教などにより個人を捜査の対象としたり、犯罪との関わりを判断することである。

 2021年12月6日、在日米大使館領事部はツイッターで、「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告があった」と、日本に滞在する米国民に警告を発した。「数名が拘束され、職務質問や所持品検査をされた」といい、拘束された場合は領事館への通知要請を呼びかけたのだ。

「間違った愛国心を持っている警察官もいる」

 米国では、警察官によるアフリカ系アメリカ人への差別的捜査や暴力行為が問題になり、Black Lives Matterとして人種差別抗議運動が度々起こっている。在日米大使館としても、この問題に神経質になっているのだろう。大使館サイドから、レイシャル・プロファイリングとして外国人への人権侵害や人種差別的な扱いを疑われた日本の警察だが、実際のところどうなのだろうか。

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「警察官の中には、確かに人種差別の意識が強い者がいる。アジア人に対する蔑視がどこかにあり、『てめぇら、うるせえ』という気持ちがある」

 外国人犯罪を専門とする元刑事A氏はこう言い切る。

「警察には間違った愛国心を持っている警察官もいる。韓国人や中国人が、電車などで大きな声を出していたら、睨んだり、うるさいと怒る。繁華街をぶらぶら歩いているアフリカ系外国人がいたら、職質をかける。白人には手を出さないが、アジア人や黒人にはすぐに手を出してしまうような気の早い警察官もいる」

電車にひかれ、頭部骨折と右足を切断するという大けが

 警察官による人種差別は、間違った愛国心からくるものだとA氏はいう。

 2007年12月22日の深夜、ある事件が起きた。これはA氏だけでなく、捜査した刑事たちにとっても警察官の内面に潜む人種差別とも戦わなければならないという意味で実に後味の悪い事件だった。

 東京都千代田区にあるJR御茶ノ水駅で、警視庁の男性警部補が駅のホームから転落。進入してきた総武線上り電車にひかれ、頭部骨折と右足を切断するという大けがを負った。駅員が、警部補がホームで中国人2人と揉み合った末、線路に突き落とされたのを目撃しており、その2人は殺人未遂の現行犯で逮捕された。