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リケジョは「21万の精子も卵子凍結代に比べれば安いもんですよ」

 試しに高学歴・高収入のA子さんにクリオスのドナーカタログを見てもらったところ、即、「すごいですね、これ」と食いついた。そしてチェック項目の「MOT(motility/運動性)」の説明を読むと、迷わず「50+」のドナーを選んだ。リケジョのA子さんとしては、妊娠成功確率を最重視だ。

精子をネット通販で宅配できる世界最大の精子バンク「クリオス」のHP。右上の30周年記念のマークが味わい深い(「クリオス」のホームページより)

 でも、21万8000円って高くないですか?

「だって卵子の凍結保存は1回につき50万円以上かかっているんですよ。いちばん高い精子でもその半額以下じゃないですか。卵子凍結代に比べれば安いもんですよ」

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 迷うのはむしろ、子どもが受け継ぎそうな髪の色や肌の色だという。自分の子どもが金髪で色白だったらステキだし、肌の色が浅黒いのもカッコいい。だから外国人の精子でも構わない。「むしろそのほうがいいとさえ思えてきた」と目を輝かせた。

 精子のドナーが匿名であることも魅力でこそあれ、不安はないという。将来「ボクが父親です」と訪ねてくるというようなメンドクサイ状況になる心配がないからだ。

 そうか。精子さえあれば父親は要らないのか。目下、AI(人工知能)の登場によって仕事を次々にロボットに奪われてオフィスからヒトが消えてしまうことが心配されているが、まさかとは思うものの、その前に父親の姿が家庭から消えてしまう日が来ちゃったりして……。

「子どもを独りで育てていく覚悟も経済力もある」

「そうなってもしかたないでしょ」

 と、A子さんはにべもない。

「男は時間もお金も自分で自由に使いたいから結婚しないわけでしょう。だったら、女は独りで頑張りますよ。ですから、シングルマザーになりたいのはエゴだと決めつけないでほしいんです。結婚しないで子どもを産もうというのにはそれぞれ事情や理由があるんだし、私にはこれから20年以上にわたって独りで育てていく覚悟ができているし、経済力だってあるんですから」

「母は強し」というが、母になろうという人は「母になる前から強し」なのかもしれない。

 選択的シングルマザーを目指すA子さんやB子さん、女性2人で子どもを育てていこうというC子さん。しかし、そんな女性たちの前には、大きな壁が立ちふさがっている。世間の偏見? そんなありふれたものではなく──。

#3「『体外受精だから発育が早い』と自慢するセレブママ。『日本死ね』と呟くアラフォーシングル女子」に続く