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《自殺ごっこが社会問題に》「一度死ねば前世の自分に会える?」『ぼく地球』で危ない手紙が殺到した日渡早紀が“フィクション宣言”をした理由

日渡早紀先生インタビュー#1

2022/05/28

genre : エンタメ, 読書

note

半年連載の予定が7年超の大ヒットに

――『ぼく地球』の連載はもともと12回、半年ぐらいの予定だったそうですが、終わってみると7年を超えました。

日渡 そうですねぇ……思ったように進まない総ての理由は、キャラがそれぞれ勝手に自分の言い分を通そうとしてくるという、未曾有の事態が発生したからでした。

 なので、展開が決まっていても着地点が定まっていても、大体遠回りになったり、逆にいきなりすっ飛ばしたり……の繰り返しで。

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――連載の大反響を受けて、話の流れが変わっていったのでしょうか。

日渡 『ぼく地球』に関しては、読者さまの意向で話の流れを変更したことは、ほぼないです。本音を言えば、キャラが作者をかなり翻弄してきたのが、扱いづらくて面倒でした。

――マンガ家の方はよく「描き始めるとキャラクターが勝手に動く」とおっしゃいますね。

日渡 これはよい解釈で使われることが多いですが、作者側にしてみるとかなり厄介です。

 無視すると、セリフを書き入れる時点で、手がマジで動かなくなるので困るんです。「あーーもぉ!(怒)」って感じで。

――先生は以前、「一番動かしにくいキャラクターは亜梨子。作者が描いている命題やプロットをひっくり返すようなことをやらかす」と書いていました。

 キャラクターが言うことを聞かないときは、本来の道筋にどう導くのでしょう?

「作者が命題を与えても、自分が納得しない限り、言うことを聞かない」(日渡)のが亜梨子。本来のプロットでは、この回で前世の記憶を想いだすはずだったが、それを拒否し、財布を持って逃げだすというまさかの行動に 『ぼくの地球を守って』©日渡早紀/白泉社

日渡 「じゃあ、とりあえずコッチ方向に行く感じで、好きに動いてみてください~」と脳内でキャラクターをなだめつつ、お互いに納得いく演出をすり合わせしながら、動いてもらいます。

 亜梨子は、以前は動かしにくかったのですが、最近ではかなり大人になってくれまして、だいぶ落ち着きました。今はその息子の蓮(れん)が、だんだんと反抗期に突入しつつある気がします。

ぼくの地球を守って 1 (白泉社文庫)

日渡早紀

白泉社

1998年3月18日 発売

《自殺ごっこが社会問題に》「一度死ねば前世の自分に会える?」『ぼく地球』で危ない手紙が殺到した日渡早紀が“フィクション宣言”をした理由

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