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研修が終わるころには「俺ってダメ人間なんだ」と痛感

「昨年、私はコンプライアンス研修に招集されました。3日間も何やるのかなと思っていたら、初日の午前中に社内講師と弁護士からの講義があっただけで、残り2日半は自己批判でした。自身のコンプライアンス違反について1万字の反省文を書いて、それを講師がチェックし、徹底的にダメ出し。3回書き直してようやく合格が出て、1日目が終了。

 それで終わりかと思ったら、2日目も3日目も似たようなテーマで繰り返し反省文を書かされました。自分のダメさ加減を書いて、それでも反省が足りないとダメ出しされて、研修が終わるころには『俺ってダメ人間なんだ』と痛感しました。コンプライアンス研修がコンプライアンス違反のブラック研修だったという笑えない話です」(物流・IT担当)

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「セカンドキャリア研修に半強制で参加させられました。まず、入社してから現在までの職務経歴を振り返るのですが、ここで講師から『あなたは何のスキルも持っていない』『まったく業績を上げていない』と厳しく指摘されました。かなり凹んだところで、残りの会社生活でやりたいことと退職後のライフプランを書かされました。やはり講師から『あなたが会社にいても十分に貢献できない。あなたには居場所がない』と宣告され、最後に『まだ50歳なら他社でやり直しがききますよ』と早期退職を検討するように言われました」(エネルギー・総務担当)

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 日本でどれくらいの数のブラック研修が行われているのか、増えているのか、減っているのか、正確な実態は不明です。ただ、ブラック研修を専門に請け負う研修会社がたくさん存在する通り、ブラック研修は決して特殊事例ではなく、広範に行われているようです。

会社がブラック研修をやめない理由とは?

 近年コンプライアンスが重視されるようになっており、「あの会社はブラック研修をやっている」という悪評が広がると、会社にとっても都合が悪いはずです。なぜ、あえてブラック研修を実施するのでしょうか。

 新人研修について、人事担当者はブラック研修の問題点を認めつつも、新人のマインドを変え、一人前の社員になってもらうために効果が大きいと考えているようです。

「人事部内でも新人研修がブラックではないか、と問題視する声はあります。ただ、学生気分が抜けない新人に、社会人の厳しさや組織の論理を知ってもらう必要があります。鉄は熱いうちにガツンと打つべきです。もちろん訴訟沙汰になっては困るので、法律には触れないように注意してやっていますよ」(金融・人事担当)

「当社では各職場でのOJTが人材育成の基本ですが、先輩社員はこれから同じ釜の飯を食う後輩をなかなか厳しく指導できません。マインド・姿勢といった部分については、しがらみのない外部の研修講師が厳しく叩き込むことが有効だと思います。できるだけ厳しくやるように、研修講師にはお願いしています」(食品・人事担当)