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「お前が一番しんどい思いしたな」

 リーグ2位から日本シリーズに進出。日本一への思いを強くして臨んだつもりだったが、試合を終えた感情は喜びよりも安堵だった。

「日本一になった喜びよりも、ホッとしたというほうが強くて。普通、日本一になったらうれしさでいっぱいなはずなのに、安堵感がハンパなかったことは覚えています。喜びを爆発させられなかったですよね……」

2007年、日本シリーズを制して日本一を決めた中日ドラゴンズ ©文藝春秋

 普通の1点差の試合とまったく異なるシチュエーション。打者を1人も出さずに抑えなくてはならないと自分に言い聞かせた緊張感。これ以上のプレッシャーは、20年間の現役生活を振り返っても記憶にない。

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 試合後、風呂場で落合と一緒になったという。交代の真意について聞かされることはなかったが、一言だけ声をかけられた。

「『お前が一番しんどい思いしたな』と。パーフェクトで抑えていたピッチャーを代えるわけだから、それだけ信頼されているというのは感じました」

 大方の人が山井の続投を考えていた場面。山井本人が8回表終了後のベンチで、迷いに迷って自分から交代を申し出た、というエピソードがのちに明かされているが、普通なら考えられない采配は落合監督だからこそできたのか。

「(代わるのは)いつもどおりでしたけど、逆にあそこで代えられる監督の勇気のほうがすごい。冷静に考えたら、パーフェクトしているピッチャーを代えるって……。代えられる監督っていったら、おそらく落合さん以外いないんじゃないかと思います。そういう決断をできる監督でした」

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