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 対する日本ハムの先発はダルビッシュ有(現サンディエゴ・パドレス)。ペナントレースは26試合に登板して15勝5敗、防御率1・82。同年の日本シリーズでは第1戦に先発して9回1失点で完投勝利。中4日、相手のヒルマン監督は後がない状況でエースを起用した。

 先発のマッチアップだけを見れば、日本一が手に届くところまで来ていた中日にとっては分が悪い。

 しかし、試合は回を追うごとに誰も経験したことのない世界へと突入していくことになる。

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「まさか、ああいう試合になるとは夢にも思わなかったですから。びっくりというしかない。想定なんてまったくできてなかった」

落合博満監督 ©文藝春秋

快投を続ける山井だが……

 午後6時10分、試合が始まった。まっさらなマウンドに立った山井は1回、先頭の森本稀哲(現・野球解説者)を遊ゴロに抑える。続く田中賢介(同)を三振、稲葉篤紀(現・日本ハムGM)を二ゴロ。日本一を目指す立ち上がりは上々だった。

 2回も4番・セギノールから三振を奪うなどして三者凡退。するとその裏、ウッズが左前打で出塁、続く中村紀洋(現・中日1軍打撃コーチ)が右中間へ二塁打。1死二、三塁となって平田良介が右犠飛を放ち、1点を先制した。

 ここから1点を守る戦いが始まる。3回、山井は相手の下位打線を3人で抑え、一巡目が終了。二巡目に突入しても快投は続いた。

 しかし、山井は万全の状態とは言えなかった。岩瀬は試合中盤の5回を過ぎたあたりで、山井の右手中指にあったマメがつぶれていることを知った。ブルペンで待機していた岩瀬には、コーチから「ランナーが1人でも出たら代わる。もう8回からいける準備をしておいてくれ」との指示が出た。

 いつもより1イニング早い8回に間に合うよう、通常7回裏から始める準備を前倒しして、ウオーミングアップを始めた。ただ、グラウンドでは山井が相手打者を完璧に抑えている。

 山井は7回、先頭の森本を第1打席と同じく遊ゴロ。田中賢、稲葉はいずれも左飛に打ち取った。

 8回、セギノールから始まった中軸の攻撃も三者凡退。打者24人をパーフェクトのまま、残すは最終回となった。