自国の発展のために、容赦なく他国へサイバー攻撃を仕掛けるのが中国だ。違法なスパイ工作には紳士協定のような暗黙のルールもあるが、中国には通用しない。
台湾をサイバー攻撃の実験場所と見なし、アメリカでは軍事情報を盗むことにも成功したその手口とは? 国際ジャーナリストの山田敏弘氏による新刊『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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中国が半導体を手に入れる方法、それはスパイ工作
中国は「世界の工場」となり世界第2位の経済大国となった。そのこと自体は世界の経済にとって、何ら問題はないだろう。しかし、問題は中国が経済成長、産業技術部門での発展を、外交、安全保障での他国への優位、強圧的な支配的ポジションの確立と、明確に結び付けようとしていることだ。
習近平国家主席は、2021年5月の談話でこんなことを語っている。
「もし科学とテクノロジーが確立できれば、国家が確立できる。そして、科学とテクノロジーが強ければ、国家は強くなるだろう」
その「テクノロジー」には、AIや5Gなどに加えて、2021年から世界的な供給不足が大きな問題となっている「半導体」も含まれている。あらゆる物事をデジタル化しようとするDX(デジタル・トランスフォーメーション)の世界では、半導体がいかに重要なものかは、誰の目にも明らかだ。
そのため、現在は世界各国による半導体の奪い合いとなっている。半導体の確保が国力に直結する時代になっているのだ。
現在中国における半導体自給率は、20%にも満たない。それを2025年には70%まで上げるとする、かなり野心的な国家目標を掲げている。しかし、トランプ政権時にワシントンで話を聞いた米政府関係者は、「2025年までに、目標は達成できないのではないか」と指摘していた。目標の数字を達成するのは現実的でなくなってきているようだ。
習近平はもちろんそれをよくわかっている。だからこそ現在の劣勢を挽回するべく、中国は他国から技術を強引にでも入手しようと躍起になっているのだ。「入手」の方法──それはスパイ工作に他ならない。
アジア地域で責任ある立場にあったある元CIAスパイはアメリカや日本などの民主主義国家と中国、ロシアの差をこう解説してくれた。