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村上世彰と堀江貴文――。意外なことにメディア上での対談は初めてだという。日本の常識に反旗を翻し、風穴を開けてきたふたりが、あの頃と今を語り合う。村上氏は『生涯投資家』(文藝春秋)、堀江氏は『多動力』(幻冬舎)を出版したばかり。顔を合わせたふたりは、挨拶もそこそこに、「出版におけるAIの活用」について話し始めた。
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AIで本を作れるか
村上 いきなりだけど、本作りのAIってどうなってるの? 堀江がしゃべったことをデータベース化して本にまとめたり、そこから売れた、売れないを分析してさらに進化するという話だっけ?
堀江 ちょっと待ってください。村上さんの中でAIというのが魔法の箱になっているみたいなんで、そこの技術的理解を進めないと(笑)。最近、なんでこんなにAI、AIと言われているかというと、ディープラーニング、日本語で言えば深層学習がものすごく進化して、人間のニューラルネットワークを模したコンピュータのアルゴリズムが試行錯誤しながら学習するようになったから。例えば今、Googleの翻訳はかなり正確になっていますよね。それはディープラーニングの成果です。
村上 なるほど。そのAIで本を作れるの? クリエイティビティが要るよね。
堀江 オリジナルのクリエイティブをアウトプットするのは得意分野ではないですよね、今のところは。でも、例えば星新一のショートショートみたいな小説はできると思いますよ。似たようなストーリーが多いから、その膨大なデータを与えれば同じようなアウトプットはできますよね。
村上 なるほど。今回、本を書いてみて思ったけど、これをどうやって構成していくかってグチャグチャ考えるのは大変で。AIがやってくれたほうが楽だなと。
堀江 そこの部分はちょっと難しいかもしれない。本を作る過程でAIを導入するなら、まず文字起こしですよね。AIを使った音声認識のAPIを使えば簡単にできます。校正も得意分野だと思うし、僕風の表現に変えるのも得意かもしれない。でも、構成は人間がやればいい。
ウサイン・ボルトは社会に必要か
村上 堀江という人間が何をどう考えているかまで理解をして、さらにそのコンテンツをうまくまとめて、マーケットで一番評価されるものを作るところまでAIにやらせるのはやっぱりすごく難しいのかな。
堀江 本を作る作業というのはいろんなフローがありますよね。このフローの中でいかに人間を使わないですませるかを考えるより、AIが得意な部分を活かしてコストダウンしていく、あるいはリードタイムを短くする。人がやるか、AIがやるかという問題は実はどうでもよくて、どっちが安いか、どっちが速いかだけですよね。その流れで言うと、Amazonの倉庫、マクドナルドの厨房あたりは人がいらなくなる。
村上 その手の分野はどんどん人がいなくなるよね。そういう時代に一番価値のある人間ってどういう人なの?
堀江 みんな、よくそういう質問をするんですけどね。じゃあ例えば、ウサイン・ボルトは社会にとって必要ですか?
村上 別に必要ないけど、かっこいいよね。
堀江 100メートルをいかに速く走れるかって、実社会ではまったく役に立たないスキルじゃないですか。僕だってバイクに乗れば一発で抜けますよ。でも、ウサイン・ボルトかっこいいし、高収入でしょう。あれが未来ですよね。
村上 ん? よくわからない。
堀江 例えば、車も完全自動運転の時代になると、今、街中を馬で走っている人がいないように、自動車を運転する人はいなくなるわけですよ。でも、カーレーサーっていう職業は絶対残ると思うんです。それは競馬の騎手が残っているように、あるいは乗馬を趣味にする人が残っているように、サーキットでは相変わらず人間が運転する車が走っている。
村上 それってショービジネスということ?
堀江 はい。だから、エンタメ、スポーツ、ショービズはこれからバイ(buy)ですよね。