今年5月31日にサービス開始されると、瞬く間にネット上で話題となった「VALU(バリュー)」。個人を会社に見立てて、「自分を株式上場できる」という仕組みだ。それぞれの「価値」に応じて値段が決まり、本人はVALUを売り出すことで資金調達ができる。流通するVAと呼ばれる擬似株券は需給によって価格が上下し、第三者も売買することができる。VALUは仮想通貨ビットコインで取引され、すでに「時価総額」が10億円を超えるVALUも誕生している。

 VALUは仮想通貨バブルの徒花になるのか、はたまた新時代のインフラとして定着するのか。VALU代表の小川晃平氏に聞いた。

フリーになってクレジットカードの限度額が減った

―― VALUはまったく新しいサービスですが、「VALUって何なの?」と聞かれた時には、どう答えているんですか?

小川 「簡単に言うと、SNS×クラウドファンディングみたいなものですよ」と説明をしています。ただ、言葉で伝えるのは難しい。15年前に「SNSって何なの?」っていう質問をするのと同じで、やはり使っているうちに慣れていただくしかないのかなと思っています。そのSNSにしても、当初はいろんなかたちがありました。ただ、現在使われているFacebookやInstagramを見ていると、やがてサービスが収斂していったわけです。VALUも、2~3年後にはいろいろな変化を経てインフラとして根付いているんじゃないかと。すごく感覚的な話ですけど。

 あと、「SNSなのか?」「株式なのか?」といった議論が続いているからこそ、これだけVALUが注目されているのかなと思う部分もあります。

ADVERTISEMENT

VALU社長・小川晃平氏 ©文藝春秋

―― 小川さんのこれまでの経歴を教えてください。

小川 もともとは大学院を卒業して、新卒でグリーに入社しました。モバイルアプリゲームの開発などをやっていまして、その後シリコンバレーにあるグリーのアメリカ支社に赴任しました。帰国後は新規事業でホテル予約サイトなどの開発に携わって、2014年に辞めてフリーランスになったんです。VALUを始めたのは、去年の8月とか9月ぐらいですかね。

―― なぜVALUだったんでしょうか。

小川 サラリーマンは社会的信用がすごく高いんですよね。ところが、会社を辞めてフリーランスになった瞬間にクレジットカードの限度額が30万円になって、そのことを嫌というほど気づかされました。自分の能力は伸びているのに社会的信用は落ちている。ちょっと矛盾しているなと。そういった思いもあって、VALUというサービスができたような気がします。組織に所属していないクリエイターさんには、自分と同じような経験をしている人がたくさんいる。そういった方々に応援、拡散してもらっているというのが、やっぱり一番デカイかなと思っています。

―― スタートアップには、堀江貴文さんも関わったと聞いています。

小川 堀江さんには、当時も現在も「アドバイザー」という立場でVALUに関わってもらっています。1ユーザーとして改善点の指摘を受けたり、大事なアップデートがある時には情報拡散をお手伝いしてもらっています。

―― 先ほど「SNS×クラウドファンディング」という話がありましたが、そういうサービスに興味があったんですか?

小川 出発点としては、まずビットコインの仕組みにすごく興味があった。これまで通貨制度は、ポンド本位制とかドル本位制とか金本位制とかいろいろ変遷してきているじゃないですか。そんな中で、歴史を変えるようなビットコインのテクノロジーに惚れ込んで始まったんです。