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「完結しないから面白い」

―― 一方、VALUには「わかりにくい」部分もあります。例えば、クラウドファンディングでは「ミャンマーに学校を建てるので500万円を集めます」と資金を募って、実際に学校が完成すればプロセスが完結します。しかし、VALUの場合は、仮に売り出したVALUが完売しても、どこでそのプロセスが完結するのか見えにくいのではないでしょうか。

小川 それはおっしゃる通りですね。どういうふうに説明すればいいのかな……。逆説的かもしれませんが、「完結しないから面白い」と僕たちは思っているんです。クラウドファンディングは予約購入サイトに似ていて、1個のプロジェクトを支援できて、その1個のプロジェクトが終わったら支援者との関係性が途切れてしまう。でも、VALUの場合には、現時点では「何がしたいのか」がフワッとしていたとしても、「この人は熱量があるから、もしかしたら支援して、アドバイスしたらより面白いことができるかもしれない」といった出発点から議論をしながら成長できる。プロジェクトで完結する関係性ではなくて、その人の成長を見続けていられる継続性が、クラウドファンディングとVALUの大きな違いなのかもしれません。ですから、ユーザーの中には明確に「これをやりたいから、資金がほしい」と言っている人ももちろんいますけれど、先ほどのコスプレーヤーの例のようにベーシックインカム的にVALUで支援してほしいという人もいます。

―― 現在、発行されるVALUの数は、初期に割り振られる数から増やせないシステムになっていますね。

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小川 分割できる機能は実は設けようと思っています。今、絶賛開発中です。そうしないと、今は100VAしか発行していない人が将来有名になった時にどうするんだ、というケースをサポートできなくなってしまうので。そこは重点的に開発していこうと話し合っています。

©文藝春秋

―― VALUは年内にどれぐらいの規模まで拡大するのでしょうか。

小川 分からないですね。アプリ化の反応も読めないですし、そもそもビットコインを買うという行為自体のハードルがものすごく高い。ただ、ビットコインの取引所さんから話を聞くと、「VALUをやりたいから早く口座開設してくれ」といった要望がかなり寄せられているそうです。ビットコインに限らず、イーサリアムや他の仮想通貨をベースにしたアプリケーションは、今後もっと生まれてくるんじゃないかと推測しています。

―― 会社としては、今後に向けて上場する計画はありますか?

小川 まだ始まって2カ月ですから、実際本当にどのぐらいのバーンレート(資金燃焼率)なのかも見えていませんし、何とも言えないですね。

―― 今後は、どんな展開を考えていますか?

小川 僕がそうだったように、フリーランスのクリエイターはそう簡単に資金調達ができない。世の中には、そういう人がたくさんいると思うんです。NPO法人もそうですね。NPOは社会的には意義がある活動をしています。だけど、非営利なので価値がないとみなされてしまうのです。そこに価格付けすることは、資本主義的にはものすごく意味があると思います。今まで価値が付かなかったものに価値が付くわけですから。法律的に可能なのかはわかりませんが、今後のチャレンジにはなるのではないかと考えています。システム的には難しくない。これからも世の中に対してプラスのインパクトを与えていくことが、僕たちVALU運営側の仕事です。