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投機的な動きを意図的に抑えている

―― 今、ベータ版として公開されていますが、正式リリースになると何が変わりますか?

小川 正式リリースのタイミングでアプリ化したいと思っています。経験上、ウェブはモバイルと違ってユーザー体験がすごく集まるので、スピーディにPDCAサイクルを回して機能開発が進むんです。ベータ版である程度の問題が起こるだろうなと予想していたので、クイックに対応できるようにシステムを設計してあります。アプリ版ローンチのタイミングは、寒くなる前には出したいなと。遅くとも年内には。

―― 2カ月間試行錯誤して、主にどういった点が改良の対象になってきたのでしょうか。

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小川 一番気を付けていたのは、ユーザーのリテラシーに合わせた機能制限ですかね。そこが一番難しい。日本では金融に関する知識を義務教育で教わらないこともあって、金融のリテラシーがないとVALUで損をしてしまう可能性がありました。そこに対しては、運営側として制限をかけています。

―― 具体的には?

小川 今のところ、主に3つあります。取引量の制限、値幅制限(ストップ高、ストップ安)、そして1ユーザーに対して1日1回しかオーダーが出せないという制限です。

―― 例えば、私が小川さんのVALUを買おうとしたら、1日1回しか買えないということですか。

小川 そうですね。売り買い合わせて1回です。

―― デイトレード的な取引はできない、ということですね。

小川 できません。かなり縛っていると思います。みんなのリテラシーが上がってきたら少し緩めるかもしれないし、人が増えてきて荒れそうだったらもっとキツくするかもしれません。

©文藝春秋

―― メンバーの中に、いわゆるフィンテックや金融に詳しい方がいるんですか?

小川 本当のプロフェッショナルはいないので、外部の専門家に「どういうふうにすればいいですかね」とご相談しています。また、リリース前には、3~4回は金融庁を訪問しました。「こういう仕様でやるんですが、法律的に大丈夫でしょうか」と確認するためです。もちろん、顧問弁護士とも話し合っています。とはいえ、VALUは株ではないので、完全に株式市場を模倣する必要はありません。自分たちはどういうシステムを作りたいのか、どうすればユーザーがもっと喜べるかな、と常々考えています。

―― VALUのトータルでの時価総額は、現在いくらぐらいになっているんでしょうか。

小川 トータルの時価総額は公表してないですね。飾りみたいな数字なので、あんまり出しても意味がないと考えています。

―― ものすごいスピードで増えている?

小川 そこまで増えてはいないです。このユーザー規模でここまで行ったらヤバイな、という意識があるので。投機的な動きを意図的に抑えています。僕たちのビジネスモデルは、最初のVALU売り出し時に10%、それ以外の取引で1%の手数料を徴収しています。ですから、正直取引されればされるほど儲かる仕組みなんですけど、中長期的に見ると、投機目的でダーッと上がっていく状況では、僕たちのもともとのコンセプトから乖離してしまう。

―― 焼け野原になってしまう。

小川 目の前のお金よりも長くサービスを続けることを優先させています。いくらでも悪さはできるんですけど、自分たちが生きていける生活レベルでやろうと。みんなクリーンな心を確かめ合いながら(笑)。

 最近、仮想通貨を用いた投資が過熱していて、「ICOバブル」と呼ばれる現象も起きています。アメリカの会社が、わずか3時間で150億円を調達したとか、完全にバブル的な動きになっている。僕は2~3年でバブルが崩壊すると思っているので、VALUはそうならないように意図的にすごく抑えて、ちゃんと成長させていこうとディレクションしてます。

―― VALUのシステムとして、株主リストのようなかたちで誰が誰のVALUをいくら持っているか、アイコンですべて可視化されています。このあたりはSNS的ですね。

小川 そうですね。これには二つの意図があって、最初は非公開にしていたんですが、インサイダーみたいな動きが多くなってしまって。見えていれば不正が起きにくい。それから、現実の投資の世界でもそうですけど、スタートアップで有名なインベスターが入ると「あの投資家が入っているなら」と他の人にも波及していきます。面白いクリエイターが支援している活動なら、自分も支援したい、と輪が広がっていく仕組みになっています。