自分がマリーンズファンだと明かすと返ってくる主な反応のひとつに「ロッテって応援すごいよね」というものがあります。いや、「ひとつに」なんてうっかり書いてはみたけれど、ディープな野球ファンでもない限り、大多数の人のファーストリアクションはまず間違いなく「応援すごい」。
少なくとも“コロナ以前”の日常会話のなかで、そこで具体的な選手名を挙げて、アゲてくれるなんて人には、ほとんどお目にかかったことがありません。
もちろん、ぼく自身もマリーンズの応援は大好きだし、誇りに思うひとつ。
福浦和也の引退以降、全選手が年下となってしまったいまとなっては、さすがに外野席で汗だくになって飛び跳ねる元気はないけれど、本拠地マリンのどの席で観るのが好きかと言ったら、そりゃもう、ライトスタンドのちょうど対面。あの大声援をダイレクトに浴びられて、なおかつ球場全体が見渡せる、ホームから少し3塁側寄りの2階席こそが、いちばんのお気に入りだったりします。
それ以外には魅力がないようにも思えて…
聞くところでは、新しく日本にやってきた助っ人外国人の多くも、まず最初に衝撃を受けるのは、統制の取れた声援メインのあの大応援とか。なかには、家族を招待する日を、所属チームの本拠地ではなく、わざわざマリンでのマリーンズ戦に設定する選手もいるようですから、もはやライトスタンドの光景には、国境や言語を超えて胸を打つ“エモさ”があるといっても過言ではなさそうです。
でも、しかしです。いくら「応援すごい」が事実だとしても、そればかり言われ続けるのは、やっぱりちょっと複雑な気分。「そうですよねぇ、いいですよねぇ」なんて笑顔で応じながらも、心のなかには「もっと他にちょうだいよ?」と、さらに欲しがる自分もいます。
だって、“粉もん文化”が日常の一部になっている大阪人に「大阪と言えば、たこ焼きだよね」と言っても、返ってくるのはたぶん「それがどないしたん? お好みもあるけど」。そのあとが続かなければ、「もっと他にないんかい!」と強めにツッコまれるのがオチでしょう?
ちなみに、数年前に球団公認のムック本を作ったときにも、付録DVDの企画で「マリーンズファン以外に聞きました」と題した他球団ファンへのイメージ調査を野球居酒屋でやったことがありますが、そのときのみなさんの反応も、押し並べて似たようなもの。
唯一、「他球団ファンながら好きだった」と“初芝清のファンタジスタぶり”を熱く語ってくれた御仁とだけは、やたら盛り上がった記憶はありますが、あとは異口同音に「応援すごい」。ある程度はそれも想定内だったとはいえ、いざ実際に食らった「応援すごい」ラッシュには、なんかそれ以外には魅力がないようにも思えて、すごく切ない気持ちにさせられたものです。
もっとも、マリーンズというチームを端的に言い表すなら、「地味」の一語。ご当地開催の東京五輪でも、なぜかマリーンズだけは侍ジャパンの蚊帳の外(これだけは、いまだに根に持っていますよ。稲葉さん)でしたし、ファン投票でオールスターに選出された球団生え抜きのスターに至っては、2010年の里崎智也以来、もう12年も出ていません。
ただ、そんな自他ともに認める地味なチームであっても、「応援すごい」以外の褒め言葉はあって然るべきだと思うのです。直近でTwitterのトレンドを賑わしたワードが、「万年最下位へボロッテピーナッツ」だなんて、むちゃくちゃ面白いけど、あまりに悲しいじゃないですか。