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 最初にそういう作品を読んでしまったせいか、少年誌のステレオタイプな勧善懲悪の漫画を読んでも、すごく一面的というか、薄っぺらく感じてしまったんですよね。もちろんいま漫画家の立場になって読むと、少年誌の漫画ってめちゃくちゃ考えられているし、面白いんです。でも、自分の場合はやっぱりある程度、「こんなこと描いちゃって大丈夫?」というくらい行けるところまで行くものじゃないと、本当の意味でゾワゾワしないんだなと。

ドラマ化もされた人気作である『彼岸島』(講談社)

「見てはいけないものが見たい」という心理は誰しも持っている

――残虐な描写を見てどこか背徳的にゾクッとするというのは、読者の多くも感じたことがあるのかもしれませんね。

大瀬戸 そうですね。自分の性格もあるんでしょうけど、結局は「見てはいけないものが見たい」という心理は人間、誰しも持っていると思うんですよ。猟奇事件や凶悪犯罪も、表向きは「悪いことをしてはいけない」という綺麗事として報じられていますけど、報道などを目にする人の心理はそれだけではない。これは有名人の不倫報道とかもそうだと思います。

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 口では「私はそんなことない」というのはいくらでもいえると思うんですけど、みんなちょっとはそういう興味本位の要素を持っている。逆に言えば『影夢街』も含めたサスペンス作品のバイオレンスなシーンを楽しむという姿には、人間としてのウソはないのかなとも思います。自分は読者のそういう部分に届くものが描ければいいかなとは思います。

5月19日に発売になった『影霧街』1巻

実際の事件で犯人の心理を考察することも

――一方で激しいエログロ描写とかは、描く側も躊躇したりしませんか? 最近はフィクション作品であってもコンプライアンスなどが指摘されるケースもあります。

大瀬戸 そこは全然気にしていないです。変に自分でブレーキをかけすぎるよりも、まずは描きたいところまで描き切りたいなと。その辺りは編集者に甘えて、やりたいようにやっています。 あとは結構、激しいグロ描写とかもブレーキ踏まずに描いているつもりなんですけど、作品を読んでいる友達とかに聞くと「もっと行けるよ」みたいに言われるんです(笑)。意外と読者の方が貪欲なんだなぁと。自分でも「まだまだいける」と思って、もっとギアをあげていければと思っていますが…。ヤンキーものやエログロに定評がある『ヤンマガ』のウェブという媒体の特性もあるのかもしれませんけど。