できた料理が美味しければ、どんな調理法や調味料でもあり
――転機はなんだったのでしょう。
リュウジ イタリアンって基本的にうま味調味料を使わないんです。でも、僕がかつて勤めていたイタリア料理店では、バンバン使っていました。「とんでもないところに来ちまった」と思いましたね。
で、その店は休憩もとれないくらいの超人気店だったんです。
――人気店の隠し味が“味の素”だった、ということですね。
リュウジ 翻って、「自分はうま味調味料なしでこのイタリアンのような繁盛店が生み出せるか?」と考えたら、うま味調味料を使わないのは自分のただのエゴだと思い至りました。この時から人が喜ぶ料理を一番に考えるようになって、僕のレシピはガラッと変わりましたね。
――それ以前はどんな料理を好んで作っていましたか。
リュウジ ウサギを空輸してフランス料理を作ったり、ブイヨンだったら自分でとるところからやってました。だけど今思えば、まあ、意味ねぇな、っていう感じです。結果できた料理がうまければ、どんな調理法でも調味料でもありじゃん、と思ってます。
タイムマシンがあったら、昔の自分をぶん殴りに行きたい
――自分もですが、つい「手作り」やオーガニックを称えがちです。
リュウジ 自分も昔付き合っていた彼女に「手間暇」を押し付けたことがあります。その子がカレーを作ってくれたんですけど、ニンジンの皮をむいてなかったんです。「人参の皮くらいむこうよ」「うちはずっとこうだよ」「いやいや、普通むくでしょ」みたいな感じでひと悶着して。
でも、自分で料理をめちゃくちゃやり始めてからわかりました。全然、ニンジンの皮なんてむかなくてよかったんです。彼女に言ってしまったことを本当に後悔しました。料理をやらない人ほど無邪気に「手間」をおっかぶせてくるんです。過去の自分がそうだったからよくわかります。大バカ野郎ですよ。
――それはいくつくらいの時のお話ですか。
リュウジ 18、19くらいですね。浅かったです、本当に。手間をかけることが料理だと思ってたんで。