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 田中のそうした経験もあって、コンビの関係性も変わっていく。それまでのアンガールズのコントは、変だったりダメな二人が登場するものが多かったが、その後の単独ライブではそれぞれ別のキャラクターを演じることが増えた。そこには山根の変化も影響しているようだ。それまで無感情な人間だけを演じてきた山根だが、テレビに出続けるうちにその素性が世間に知られ、また感情も出せるようになってきた。そのおかげで、コントの内容もストーリー性を持たせたり、幅が広がったという(※7)。

山根が金曜日のパーソナリティを務めるラジオ「おとなりさん」(文化放送)

山根がネタを書かない理由

 なお、ネタをつくっているのはもっぱら田中だ。清水ミチコを交えての鼎談(※3)では、ちっともネタを書かない山根に田中が改めて苦言を呈した。しかしまるで暖簾に腕押しで、たまりかねた田中が、コンビ結成以来ずっと書いていない山根の場合、50本書いてようやく1本使えるくらいだと言うと、《俺がいくらプロ野球選手になりたくても、プロ野球選手にはなれないじゃん。何球投げても》とよくわからないたとえで言い返されてしまう。そのあとのやりとりがまた可笑しい。

田中 プロ野球選手にはなれないよ。俺もなれないよ。でもお前、芸人にはなってるじゃん。お笑いっていう、面白い人たちが集まっているところで生きてるプロなんだから、自分が面白いと感じたものを拾って書くくらいのことは、できるでしょう。
山根 それができない、19年いて1本も書かないということは、俺はもう……。
田中 芸人じゃない? なんなんだよ、もう!(笑)
山根 草野球ならぬ、「草芸人」とか。(笑)》

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 これには清水も、《このやり取りがもう十分ネタになってるよ》と爆笑していた。いつも必死な田中と、マイペースな山根と、コンビとしてはバランスが取れているのかもしれない。

 田中は最近になって、ネタ番組などで若手芸人に的確にアドバイスしたりと、理系(建築学部)出身ならではの理論家ぶりで改めて評価が高まっている。そのあたりを踏まえてだろう、この4月からフジテレビ系の日曜夜に『呼び出し先生タナカ』という番組が始まった。田中にとってこれが地上波のゴールデン帯レギュラー番組では初MCとなる。

「呼び出し先生タナカ」番組公式サイトより

 山根も我が道を行く。前出のラジオ番組『おとなりさん』では、ときおり娘について話したりと家庭的な雰囲気を醸し出し、午前の時間帯にぴったりハマっている。同番組では、ラジオ界全体を盛り上げようと、全国各地のローカル番組のパーソナリティとトークするコーナーもあり、ラジオ好きにはたまらない。

 どんなにインパクトのあるキャラクターでも、時間が経つうちに見るほうも慣れて、やがては飽きられてしまう。しかし、アンガールズは、互いに実力をつけ、新たな関係性を築きながら、すでに定着したキャラクターにプラスアルファすることでその壁を乗り越えた。それはここ最近の二人のそれぞれの活動が証明している。

※1 『女性自身』2017年1月31日号
※2 『ターザン』2020年12月10日号
※3 『婦人公論』2019年8月27日号
※4 『小説新潮』2022年4月号
※5 『小説新潮』2022年2月号
※6 『お笑いTYPHOON! JAPAN』Vol.8(2004年)
※7 『ピクトアップ』2016年10月号