比べることの出来ない“辛さ”
月本さんが話してくれたように、個人差が大きいこの病。「学校に行かなくちゃ」というプレッシャーが本人を追い詰め、症状を悪化させる場合もあることから、子どもの気持ちを第一に、寄り添うスタンスを大切にしたいと感じた。
起立性調節障害に似た症状を持つ別の病気として、「鉄欠乏症」や「脳脊髄液減少症」などが挙げられるという。月本さんは、「『起立性~』と診断されても、血液や脳の検査もしてもらったほうがいい」とアドバイスする。
「起立性調節障害になる原因はいろんなパターンがあることも段々わかってきていて、体の急激な成長による身体的要因もあれば、精神的ストレスによる心因的要因もあるようです。
私は天気や社会情勢などが病気に影響したことはあまりなかったですが、その人のストレスのかかり方によっては症状が悪化することもあるんだと思います。これは最近知ったのですが、コロナの影響でこの病気になった方もいらっしゃるようです」
長引く疫病、戦争、経済不安……。健康な人でもメンタルが揺らぐ事態が相次いでいる。
それぞれの「辛さ」を比べることはできないからこそ、私たちにできることはなにか。月本さんは著書の中でこのように綴っている。
「“普通”ならみんなが知っているはずの学校生活をほとんど知らないことに対して強い不安を感じていた頃もありました。でも今は、病気によって知ったことを活かして、こんな自分だからこそできることや描けるものがあると信じてやっていこうと思っています。途中でちょっと躓いて時間がかかったとしても、描きたいことをエンタメとして出せるように踏ん張っていきます」