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「100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた」21歳の“地味な女子大生”が池袋でカラダを売り続ける“悲劇的な事情”

『ルポ池袋 アンダーワールド』より #2

「風俗以外に選択肢がないから、風俗はこれまで3年間やらざるを得なかった。でも、結局、卒業できないことになりました。実は3ヶ月前に4年後期の最後の学費分の預金を一緒に住んでいる祖母に使われてしまいました。預金は120万円くらいあったけど、ゼロになっていた。びっくりしました。祖母は私が物心ついた頃からパチンコ依存症で、朝早く起きて草加だけじゃなくて八潮とか越谷とかまでパチンコしに遠征している。全部お金がなくなりました」

あとは就職活動するだけだったがすべてが水の泡に

 120万円は池袋の風俗で中年男性にカラダを売って、精液を浴び続けて貯めたお金だった。9月に最後の学費50万円を納入して、夏以降は風俗勤務を減らして就職活動する予定だった。すぐに大学に連絡した。

「祖母に返してといえなくて、母親にも相談できない。どうにもならない。大学に連絡してお金が払えなくなりましたっていったら、休学か退学かっていわれた。それで一発逆転できないかなってAV女優になったんです。仕事がなくて。あっても盗撮とか汚いおじさんを相手にしたハメ撮りとかで、120万円どころか月7、8万円にしかならない。結局納入期限にお金を用意できなくて退学しました」

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 退学届けを提出したのはひと月前という。亜里沙さんは卒業単位をほとんど取得していて、あとは就職活動するだけだったがすべてが水の泡となった。草加の祖母は孫が絶望的な状況になっても、平然と朝早く起きてパチンコ屋に出かけていくという。

「無理ですね。母親はこわいし、祖母にはなにもいえない。家族は全員こわい。ずっと虐待されていたんです。小学生のときはちょっと成績が悪いとお風呂の水に沈められたり、画鋲でカラダを刺されまくったり。だから、お金を返してほしいとかいえない。だからお金を盗られても、どうにもなりません。本当は金融か広告系に就職して、家を出て結婚とかしたかった。でも、全部ダメになりました」

 いまは日が暮れて、池袋が活気を見せる夜18時30分。西口の繁華街の入口にあるコメダ珈琲も、入店待ちの人が並んでいる。亜里沙さんは母親と祖母と顔を合わせたくないので、22時くらいまで池袋で時間を潰して帰るという。

 池袋にいると安心する。AV女優は諦めて風俗嬢に戻るつもりだが、客層が悪いことがわかっていても池袋で探すと決めている。気分が落ち込むのはバスで西新井駅まで行って東武伊勢崎線に乗ってから。竹ノ塚を越えて埼玉県に入ると、母親と祖母の顔が浮かんで気分が落ち込む。帰りたくない。でも、帰る場所はそこしかない。

ルポ池袋 アンダーワールド

中村 淳彦 ,花房 観音

大洋図書

2022年5月20日 発売

「100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた」21歳の“地味な女子大生”が池袋でカラダを売り続ける“悲劇的な事情”

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