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「100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた」21歳の“地味な女子大生”が池袋でカラダを売り続ける“悲劇的な事情”

『ルポ池袋 アンダーワールド』より #2

 亜里沙さんはひとり親家庭、草加市で会社経営者の母親と祖母と3人で暮らしている。実家から1時間半をかけて大学に通学し、授業が終わった後は池袋のデリヘルに出勤する。終電近くまで働いて草加に帰る。土日は実家から池袋に出勤する。通勤経路は東武伊勢崎線で西新井駅まで行き、そこから池袋行のバスに乗る。新宿や渋谷など、他の繁華街で働くことは考えたことがない。理由を聞くと「人が多いから嫌かな」という。池袋も人は多いが、それは問題にならないようだった。

「18歳、池袋のデリヘルで初めて……」

「母親は会社経営者なのでお金はあります。でも、とにかく大学のお金は絶対に払わないって。私大進学が決まって、これからは自分で全部やりなさいってなった。母親の出身校は慶應です。自分も私大なのに娘には私大に絶対に行かせたくない。だから、18歳で風俗嬢になりました」

 亜里沙さんは県立進学校で女子ソフトテニス部だった。アルバイト経験はない。突然、100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた。高額バイトを検索すると水商売や風俗が出てくる。北千住のキャバクラや西新井のガールズバーが目に留まった。未成年なのでお酒は飲めないので無理だろうと思った。選択肢は池袋のデリヘルしかなかった。

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「どうやって稼ごうっていうのは悩みました。入学前からお金のことで頭がいっぱいで、冷静な判断ができる状況じゃなかった。入学してから大学に相談したら授業料はちょっとは待つけど、期限までに納入してもらわないと困るっていわれて、必要なのは4年間半年ごとに50万円。入学してからどうするかずっと悩んだけど、もうカラダを売って稼ぐしかないってなりました。まず、東口にある10代の同年代が多いオタク向けのヘルスに行った。コスプレとかして稼ぎました。撮影オプションとか多い店で、なんとか風俗でやっていけそうかなって思った」

 18歳、池袋のデリヘルで初めてフェラチオや口内射精を経験した。中年男性相手に性的行為をする日々、嫌で気持ち悪かったのは最初の2、3日だけですぐに慣れた。夏休みになる頃には池袋にあるラブホテルは、すべて制覇した。

「高校までの経験人数は2人くらい。本番強要でストレスが溜まるくらいで、風俗自体は大丈夫でした。働いているとお客さんに『どうして風俗はじめたの?』って聞かれる。ずっと学費のため、親が払ってくれないって正直に話していたら、あるお客さんがポンッてお金をくれた。50万円。そのお金をもらってから余裕ができて、なんとか4年まで在学することができました。そのときはすごいって思った」

写真はイメージです ©iStock.com

 亜里沙さんが風俗嬢になったのは制度が使えなかったからだ。母親の収入が高く、日本学生支援機構の奨学金の利用ができなかった。世帯収入、資産は第一種も第二種も受給条件を余裕で超えていた。

 現在の日本ではあらゆる制度に、世帯収入の高い親が子どもへの学費給付を拒絶するという想定がない。亜里沙さんは高所得家庭の娘という扱いとなる。いま団塊ジュニア世代の親が経済的支援を拒絶して、娘が風俗嬢になるというケースは激増している。亜里沙さんは池袋で中年男性の精液を浴び、本番強要される日々となったが、草加で悠々自適に暮らす母親は見て見ぬふりをしているという。

 亜里沙さんの悲劇は、それだけでは終わらなかった。