ここ最近の長澤まさみに何となく母性を感じる。去年、映画『マスカレード・ナイト』を劇場で観たときには、スクリーンにアップになった長澤に、ふと、昭和の“お母さん女優”八千草薫を思い起こした。かつてはシャープだった顔立ちが、いつの間にか丸みを帯び、柔和な印象を受けたせいでもある。ひょっとすると長澤は将来的に、往年の八千草のように母親役の似合う俳優になるのではないか。二人は20年ほど前に映画『阿修羅のごとく』で祖母・孫の関係で共演もしており、あながち突飛な発想ではないと思うのだが……。

木村拓哉が語った「いろんな種類の母性」

 と、そんな話を最近、某週刊誌の女優ランキング企画に参加した折、担当編集者に話したのだが、何しろ直感でそう思ったにすぎず、明確な根拠も示せなかったこともあり、あまり共感は得られなかった。

 だが、筆者とまったく同じことを感じている人がいた。ほかでもない、長澤とは『マスカレード・ナイト』およびその前作の『マスカレード・ホテル』で共演した木村拓哉だ。『マスカレード・ナイト』公開時、木村は長澤とそろってのインタビューでお互いの魅力を訊かれ、こう答えていた。

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長澤まさみ ©Getty

《僕の勝手な印象なんですけど、年齢関係なく母性を感じるんです。包み込む母性もあるし、甘えられる母性もあるし、諭してくれる母性もある。いろんな種類の母性がまさみちゃんにはあるんですよね》(※1)

 その長澤はきょう6月3日、35歳の誕生日を迎えた。ここしばらく、公開を控えた作品も含めて母親役を演じる機会も徐々に増えている。なかでも一昨年公開の映画『MOTHER マザー』では、子供を置き去りにして男と遊びまわったりとその場しのぎで生きるシングルマザーを演じて話題を呼んだ。

『MOTHER マザー』(2020年)

 現実の彼女は未婚で子供もいない。脚本を読んでも、自分の演じる母親に共感も同情も感動もしなかったが、誰にとっても母親の存在は子供にとって計り知れないほど大きいと考えると、この作品が他人事には感じられなかったという。

 そのころ、たまたま会った事務所の先輩の斉藤由貴からも「母親は初めから母親だったわけではなく、子供が生まれた瞬間、初めて母親となり、手探りで母親というものになっていく」と言われ、《お互いに成長していくのが親子という関係なのか、と。親子として互いにどう影響を与え合えるかが重要なんだ、と深く納得し》て撮影にのぞんだ(※2)。