「世の中金じゃない」いかにも“良いおじいさん風”な発言も
詐欺を見破れなかった理由としては、義理人情を大事にする昔気質のキャラクターを演じていたのも大きかったようだ。
「名古屋市内のホテルの宴会場で2019年、高橋自身が世話になった人たちを招いて落語会を開いたんです。広い宴会場のスペースに客は20人ほどしかおらず、間違いなく赤字。それでも打ち上げでは気前良く全員に奢り、自分は酒を少し飲んだだけで料理にも手をつけず、じっと周りの話を聞いている。本人は良いところを見せようとしていたんでしょうね。
『世の中、金じゃないんや!』『客が来なくても、世話になった人に恩返しをするのは当然や』と言って人情味を強調していました。元をたどれば私が貸した金なんですけどね(笑)。『わしはギャンブルもやらんし、趣味といったら教員免許も持っている歴史ぐらい。有馬温泉に数日いくのが息抜きやが、あとは皆が笑っているのを見られればそれでええ』と、いかにも善いおじいさん風な発言をして、“詐欺師”と思われないように予防線を張っているのです。
人情に篤いキャラクターを生かして、騙そうとしてきたこともありました。
ある日突然、高橋が泣きながら電話をかけてきたことがありました。ワケを聞くと、『弟子が死んでしもうた。ほんとすんません、Aさんには伝えたくて…』とすごく落ち込んでいた。その2時間後にまた電話がかかってきて、『弟子が笑いが好きやったやつなもんで、皆で笑って送り出してやりたい』と言い、『50万あれば何人か呼べると思う。貸してくれまへんやろか』とお願いされたんです。
1年2カ月の間で積もり積もった借金は
さすがにその頃は借金も溜まってきていたので、『そんな時にギャラとか請求してくる奴います?』と言って断りましたよ。人望があるなら自分で呼べばいい。でもまた10分後に電話が来て『どうしてもあきまへんか?』と。『仕事中なんで』と切っても、しつこくて…。あの時は相当資金繰りに困っていたんでしょうね」(同前)
後に高橋容疑者は自身の詐欺が発覚すると、Aさんに「弟子なんかおらんわ!」と騙していたことを認める捨て台詞を吐いたという。“人情キャラ”は豹変し、2020年末には2度目の自己破産も試みていた。
Aさんが最終的に高橋容疑者に貸した金額は、積もり積もって1年2カ月の間で、約1000万円に膨らんでいた。
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